ヨコハマ・フィールドワーク/都市のミーム - トピック返信
経過報告 有吉達宏
【返信元】 ヨコハマ国際映像祭 、その後…
2010年09月29日 15:30
皆さんこんにちは。

アニメ作家の有吉です。

CREAMヨコハマ国際映像祭の記憶も日常に交ざりゆき、冬の気配が見え始めてきました。

僕は、冬の近づく感じと雪の結晶が服に触れしんみりと溶けていく浸透感ってちょっと似ているのでは?などと思ったりしつつ過ごしています。

 近況報告をさせていただきます。

 NHK名古屋と「あいちトリエンナーレ2010」の連動企画「FIVE dreams」という企画で、3人のアニメーション作家の一人として「ある心の旅」というアニメーション作品をつくらせていただきました。音制作者の、大表史明、釣心会の二人とコラボして、「場所」をテーマに制作しました。

 テーマとして選んだ場所は滋賀県は米原市の志賀谷という、古い慣習を引き継いだ情緒豊かな場所でした。琵琶湖近辺、特に湖北には集落ごとの民族宗教儀礼「オコナイ」というものが盛んであり、志賀谷の地にも独特な形で継承された「オコナイ」がありました。志賀谷の「オコナイ(華の頭)」に大きく特徴的なものが、御幣(オンベと呼ばれています)がヒトガタに近い形になっているというものがあります。

 CREAMでは都市をテーマに横浜をフィールドワークいたしました。今回はある意味真逆と思われる地に触れてみました。都市と志賀谷との比較で見えてくることを短直に言いますと、志賀谷に行くことによって都市の持つ雰囲気(位相)が明確になってくる感覚がありました。都市に抱く感覚の中にも、主となるその都市の雰囲気と、隙間やベールに隠された異物の感覚というのはあるのですが、それらの個々のイメージは拡散するというよりも、特定のイメージに連なっていくという感じでした。志賀谷の地でフラフラと歩いて感じられた感覚は、既知の概念(川に抱く感覚、山に抱く感覚)と類似した感覚からスタートし、あとはゴールの無いどこかへ拡散していくといったものです。既知の概念(個人的記号)が自分の体から離れ小さな粒になってその対象物に吸い込まれてしまうような感じです。

 今回アニメーションに入れたものはヒトガタ化してものを見てそのソースを探って得られた感覚です。御幣のヒトガタ化に対しては、それはヒトガタではなく男根だ、精霊かもしれない、いやアイヌのイナフだというような意見もあり、また実物(高さ2m程)を見させていただいて抱いた感覚は人というより人の皮膚を何かに重ねたものというようなものという印象を得たりしたのですが、志賀谷の代表者としてお話をお聴きした方の御幣(オンベ)を持つ様からは人を扱っているという意識を感じました。

 オコナイに含まれる様々な催しの中には部外者には理解不能なものがほとんどで、混乱することが多々ありました。今回のヒトガタ化というテーマで取り上げたヒトというものには、その混乱を含めた全てが入ったブラックホールであるという意識を持っています。

 現地でピンと来た風景をヒトガタとして擬人化して認識し、親密感を得てそのヒトガタのソースを探ったり、御幣(オンベ)に感じるヒトガタを描いてみたりしました。作画中ふいに琵琶湖のイメージがでてきたりと、様々に揺れながらつくっていった結果としてアニメーション作品ができあがりました。

 現在、「あいちトリエンナーレ2010」長者町会場、中愛ビル地下1階にて
「夢境」岡田昭憲、音:志人、DJ-DOLBEE
「春風列車」倉田愛実、音:ビバ☆シェリー
「ある心の旅」有吉達宏、音:大表史明・釣心会
「円街家族」岡田昭憲、音:志人
「君に触れる」有吉達宏、音:有吉奈々帆、声:東菜実、影山恵理子

の計40分をループで上映させていただいております。

 会期期間中の2010年10月31日まで、11:00〜17:30(※土曜は11:00〜17:00開場です。※日曜、祝日は開場いたしません。)の時間に上映しております。

 お時間の合います方は是非足を運んでいただきたいです。
よろしくお願いいたします。

有吉達宏 拝

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