「都市のミーム」プロジェクトのひとつでありますフラヌール調査は、四月から現在まで断続的に行われていますが、ここにその「断面」をご紹介いたします。
以下のメモは、先日(8/18)自らフラヌールと化しつつフラヌール調査を行った際の「抜粋メモ」です。なんとなく調査の体温が感じられるのではないかと思われます。
フラヌールと化すとき、撮影者の眼差しは「盗視者」ではなく「共感者」になります。子供、サラリーマン、ホームレス等々に向けられたファインダーは、いわば片想いの切なささえ帯びてきます。
そんな不思議な感覚を皆さんと分ちあいたいと考え、近日中に「合同フィールドワーク」を行いたいと思っています。まずはデジカメを持ってフラヌールする「フラヌールフォトプロジェクト」から参加者公募を行う予定です。
どうぞお気軽にご参加ください。よろしくお願いいたします!
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◆ フラヌール調査撮影:抜粋メモ
作成:有吉達宏
【TAPE13 メモ】
0~ Y150イベント施設前。休憩している草刈り
の若者(男)、おじさん。
足が痒いのか手前のお兄さんが雑談をしながら執
拗に足を触っている~0710(触覚のフラヌール)
0728 信号待ち家族。子供、母、父。子供団扇を手に持ち
触って遊んでいる。~0803(触覚のフラヌール)
0830 自転車タクシーから身を乗り出している若い運転
手。 (見立て、私空間、結界意識)
0925 信号待ちサラリーマン。一瞬つま先を上げる。(身
体的運動のフラヌール)
1015 信号待ち子供と母親。子供が足首を曲げ体重を母親
に預け遊んでいる。(待ち合わせの身体的運動,触覚のフラ
ヌール)
1116 信号待ち。母親の周りをぐるぐる回る少年。(身体
感覚、平均感覚への興味、遊び)
1149 信号待ち白シャツサラリーマン。キョロキョロと周
囲を見ている。せわしない印象。
→去っていく後ろ姿。やはり周囲を見渡しつつ遠
ざかっていく。(純粋フラヌール)
1500 信号待ち女性。日傘の柄を指で軽くたたき遊んでい
る。(触覚のフラヌール)
<象の鼻 芝生>
1648 女性ポールに腰掛けて遠くを見ている。(観察、も
しくはアフォードされる感覚に佇み遊んでいる)
1804 子供、道の脇のコンクリートの段差を歩き飛び降り
る。子供がたくさんいて、あちらこちらで段差、石などを遊び道具
として活用している。
1954 家族連れの麦わら帽子の父親。家族を見ながら周囲
もきょろきょろと観て観察もしている。(隙間に現れるフラヌール)
2115 海を観ているサラリーマンの後ろ姿近景。頭をキョ
ロキョロと動かしている。
その動きが速いので観察しながら、色々と考えが頭
をよぎっているのかもしれない。(同時多発的欲望、観察と思考の錯乱)
3131 子供3人と母親3人の行動の差。両者と
もフラヌールしているのだが、大人組は動きがのろい。(フラヌー
ル、観察の在り方、年代の差)
3437 上着を片手に、ズボンを片方膝まで上げて歩く作業
服を着た初老のフラヌールしている男性。
観察者であるフラヌールは自分の身なりにそこまで
気を配らない傾向にあると思う。(自我を忘れ気味な観察者、フラ
ヌール)
3631 芝生をもぎ取り、海へ放つ男の子。高度な遊びをし
ている。手触りと海の広さ、波の動き、ものの比重の差による浮力
を楽しんでいる。
波に浮かぶ芝生のカット。防波堤際の汚物の澱み。
(観察と応用、自我、意識の芽生え)
3847 子供が境界線を歩き遊んでいる。(子供の遊び道具
として都市を観る視点)
4032 二人の淑女が散歩している。一人が立ち止まると、
もう一人も立ち止まる。同じ方向を眺めるが二人とも観ている景
色、抱く感覚は違う。
さいしょの人は発見者であり何かを感じているはず
だが、もう一人の合わせてみる方は観察をしていない様子。(複数
フラヌールの在り方)
4353 子供と母親が岸辺で海を眺めている。子供の方がよ
りしっかりと観察しているようにみえる。
(年齢による観察の違い。ダイレクト、記憶と言う
ワンクッション、膜の介在)
4540 こどもがコンクリートの腰掛けの上に昇り木の葉に
手を伸ばすが届かない。そばにいる母親が葉を掴み子供に手渡す。
子供連れの大人に撮って、子供は感覚器官の拡張と
もとれる。子供は未知として受け入れる割合が高く、
もしかしたらこういう場合の大人は、既知の感覚の
再認識をしてたのしんでいるのかもしれない。
子供は10メートル程度歩く毎に、何かを発見
して立ち止まる。(大人の感覚器としての子供、単独フラヌールの
中にある意識、
無意識の在り方を現しているようだ)
4948 芝生と海辺の間の比較的広い場所を歩くフラヌー
ル。こういう場合遠くのものに対して観察している場合が多い。
この時は質感的、肌理の観察はほぼ無いと思われ
る。空間の観察をしているかもしれない。風も強くなる場合が多く、
より体全体の皮膚感覚が刺激を感じているのではな
いだろうか。(空間の大小により導かれる観察の在り方)
5052 歩き始めと思われる子供。歩くときは地面を凝視
し、立ち止まると周囲を観察する。スイッチが切り替わるようで、
目の前の物だけに集中する短絡的な観察の仕方をし
ている。(子供の観察のかたち)
【TAPE14 メモ】
0~ 芝生。ヒキの映像。海へたどり着いたフラヌールが
静止している。(忘却の世界へ向かうフラヌール)
0341 持っている風船が割れた少女。数秒静止する、思考
停止、無意識的な場、現象の観察
(突発的思考停止による純度の高いフラヌール)
0501 芝生の中の石の腰掛けに座る女性。裸足になり石の
感触を感じている。うつむいて眼を閉じている。
場を、観るのではなく感じている。眼を瞑ることで
瞑想的な状態に入ろうとしている。皮膚感覚に絞った観察。
閉じる動作と開く動作を同時に行っている。儀式的
な観察の在り方。無意識を意識する。相反する行動を同時に
行うことによる入れ子式空間への陶酔、旅。(内的
意識、世界へのフラヌール。入れ子構造)
0522 フェリーの屋上席で立っているフラヌールたち(意
識的陶酔、意識、無意識の入れ子式構造、同居)
0636 海を眺める中年夫婦。男性遠くを眺めている、女性
うつむいている。
男性、場への陶酔。女性、場と自己の内的世界への
陶酔。(場へのフラヌール、場にいる自己へのフラヌール。
外的陶酔と内的陶酔の対比)
0727 腰掛けに座る老人男性。ふと周りに眼をやる。(定
点的陶酔、意識的観察)
0831 カフェへ入る老人男性。(意識と無意識の同居的動揺)
0914 精神異常者と思われる男性フラヌール。(過度の陶
酔、彼岸の存在。場の変異、移動する側の入れ子構造)
0952 海に向いてうつむいている男性。(場に感化されて
内的意識へと陶酔している。
場が内的世界への誘導を行っている。内的フラヌー
ル。内的移動)
1029 自転車に乗り、八の字に走る女の子。速度の上昇に
よって起こる情報裁断による情報のホワイトノイズか、平均化。
流れる場の感覚。場が混ざり液体状になる。自動
車、電車から眺める視認できない風景、速度が情報を裁断、平均化する。
点が線となり重なり面となり、膜となる。現実的海
面の表れ。(場の液状化、海、浮遊。瞑想的フラヌール、忘却への
誘い。)
1158 フェリー乗り場の老人男性二人と女性。男性綱を触
り感覚的フラヌール。女性、場に浮遊する自我、場からの離脱。
場から離れ迷走する自我=意識=自我の芽生えによ
る観察からの遊離。(自我=意識と無意識行動の対比関係)
1530 海辺でケータイを眺める女性。意識と無意識の乖
離。無意識、場を感じている。意識、電子空間をフラヌール。
(電子空間が起こす意識と無意識の剥離現象)
1603 遠ざかる観光客、一定方向に向かって遊歩する集団
を思わせるが、実際は意識的行動。(無意識的集団行動の不可能性)
2249 遊歩する夫婦。複数のフラヌール集団は、動線が定
まらず交じる。(フラヌール団体と観光客の団体との見分け方)
2341 ベビーカーをひく男性、横を歩く子供。ベビーカー
の幼児、精神的フラヌール。
子供、身体を伴うフラヌール。男性身体を置いてき
たフラヌール(成長によるフラヌールの3段階変化)
2645 歩きつつ、立ち止まり、歩き、また立ち止まるフラ
ヌール。観察に目的があるフラヌール。
照準を絞った無意識的観察。次のカットも同じよう
なフラヌール。
(立ち止まるフラヌール。発見を意識している)
ZAIM付近路上
2937 カムフラージュしているホームレス風男性。(カム
フラージュ、都市の見立て)
3059 ケータイを観ながら歩く女性。意識と身体の剥離。
意識と無意識の剥離。(電子空間が起こす意識と無意識の剥離現象)
3238 路上でたまるサラリーマン集団。勧誘空間としての都市
(公共空間の私有化、公共空間=官有空間)
3347 都市を歩くフラヌール。歩みが早い。意識の割合が
高い。もしくは錯乱度合いが高い。(浅い無意識行動)
3623 信号待ちのバイカー郵便配達員。ふいに訪れる自由
時間。周囲を観察しつつ、袖をまくっている。
(エスカレーター的隙間時間に現れるフラヌール)
3744 待ち合わせ女性。鼻を触る。待ち合わせとして静止
している時、皮膚感覚が敏感になる。(静止することで鋭さを増す
皮膚感覚)
4057 ポールを木と見立てている男性二人。木と見立てて
いるとしたら、触覚的なつるつるの感触が、
意識の錯乱を起こさせているかもしれない。(見立
て、見立てが産む意識錯乱の兆し)
4136 カフェの屋外席でケータイで話す男性。水を飲む。
(電子空間が起こす意識と無意識の剥離現象,動物性)
4929 車いす女性と車いすを押す男性。男性は周囲をよく
見るが陶酔とはかけ離れた意識的観察。車いす女性はフラヌール。
(陶酔的観察と意識的観察の対比)
球場公園内
5104 入り口付近。ケータイで話しながら歩く女性。身を
屈めている。(電子空間が起こす意識と無意識の剥離現象)
5132 公園のベンチでくつろぐ人々。(意識と無意識の混
在、入れ子構造)
8月18日、午後2時から7時頃までの調査より