書名:技士道十五ヶ条 ものづくりを極める術 著者:西堀 栄三郎 発行所:朝日新聞社 発行年月日:2008/1/30 ページ:316頁 定価:640円+税 南極越冬隊隊長、日本山岳会会長、品質管理のエキスパートなどなど豊富な経験の持ち主。同時代に今西錦司、桑原武夫などの友。雪山賛歌の作詞など技術屋ばかりではなくいろいろなことに興味を持って果敢に挑んでいった先人の遺言の書というものかな。西堀栄三郎とは「南極越冬記」という本が岩波新書から出ていた。これを読んで西堀栄三郎に興味を持った。西堀栄三郎は実践の人、行動の人だから著作は専門を除けばすくない。「石橋を叩けばわたれない」など面白い。叩いている暇があったら渡ってしまえだ。1990年に「創造力」という本を改題再編集されたものです。 研究、開発、技術、科学などを西堀流に定義して物事を論理的に考える。そして技術屋として人生の大半を過ごしてきた経験から、創造性についていろいろな提案をしている。そしてまとめたものが技士道十五ヶ条。学者の前に。技術者の前に。「人間であれ」ということを強く言っている。技術者が持つ勇気と自覚を。技術は功罪を伴い、時には人類を滅亡させる可能性がある。技術者はそれを常に考え、創意工夫が必要である。ロマンのある技術を志向して欲しいと言っている。 将来期待が持てる技術として「地下を利用する技術」「原子力における溶融塩炉の技術。固体燃料から液体燃料」「超寿命製品の開発。」自然の恵みを受けて技術を行わせて貰っているということを片時も忘れてはならない。 ◆ 技士道(本文より) 技士道は武士道、騎士道に対応して、技術者としてのあるべき姿、行動規範、綱領を西堀先生がまとめられたもので、次の15カ条を掲げている。 一 技術に携わる者は、「大自然」の法則に背いては何もできないことを認識する。 二 技術に携わる者は、感謝して自然の恵みを受ける。 三 技術に携わる者は、人倫に背く目的には毅然とした態度で臨み、いかなることがあっても屈してはならない。 四 技術に携わる者は、「良心」の養育に努める。 五 技術に携わる者は、常に顧客指向であらねばならない。 六 技術に携わる者は、常に注意深く、微かな異変、差異をも見逃さない。 七 技術に携わる者は、創造性、とくに独創性を尊び、科学・技術の全分野に注目する。 八 技術に携わる者は、論理的、唯物論的になりやすい傾向を戒め、精神的向上に励む。 九 技術に携わる者は、「仁」の精神で、他の技術に携わる者を尊重して、相互援助する。 十 技術に携わる者は、強い「仕事愛」をもって、骨身を惜しまず、取り越し苦労をせず、困難を克服することを喜びとする。 十一 技術に携わる者は、責任転嫁を許さない。 十二 技術に携わる者は、企業の発展において技術がいかに大切であるかを認識し、経済への影響を考える。 十三 技術に携わる者は、失敗を恐れず、常に楽観的見地で未来を考える。 十四 技術に携わる者は、技術の結果が未来社会や子々孫々にいかに影響を及ぼすか、公害、安全、資源などから洞察、予見する。 十五 技術に携わる者は、勇気をもち、常に新しい技術の開発に精進する。 ・・・このような人類に共通する理念を技術者はいつも心の底に持っていて、それにいたる道の第一歩として、いま何をなすべきかを常に問い続ける姿勢が必要なのではないかと思う。技術者には、自分こそが人類の未来を切り開いてゆくのだという自負と気概をもつことが要求されているのである。 |