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2016年07月26日(火) 
書名:天災から日本史を見なおす 先人に学ぶ防災
著者:磯田 道史
発行所:中央公論新社
発行年月日:2014/11/25
ページ:221頁
定価:760円+税

著者は歴史学者で、NHK「英雄たちの選択」の司会者として出演しています。過去の古文書、言質の古老の話などを丹念に集め、そのときの天災によって、人間の歴史の見方、世界観が変わった。として独自の災害史をまとめています。日本史を天災との遭遇という視点で見直し、問い直しています。

豊臣政権時代二度の大きな地震(天正地震(1585年)、伏見地震(1596年))に襲われています。先の天正地震の2ヶ月後、徳川家康(3万人)との戦いを予定していた。豊臣秀吉の大軍(10万人)で攻める予定だった。兵力では圧倒的に豊臣秀吉有利。その前に石川数正の裏切り(未だに歴史の謎とされいる)徳川・豊臣の大激突を予想して、先に豊臣方へ寝返った?
ところがこの地震が起こったことで秀吉軍の前線基地の近江、美濃、尾張は震度5~6で殆ど壊滅してしまった。特に長浜城、大垣城は壊滅、兵站基地の壊滅。一方家康軍は殆ど被害がなかった。秀吉は年のいった人妻の妹を離婚させて、家康に嫁することで事を収めた。この自身なかりせば徳川家康の天下はなかったかもしれない。

さらにさらに1596年に起きた伏見地震は伏見城(最近ようやく伏見城の跡が発見された)秀吉の居城で秀吉は9月5日の深夜、裸のまま幼児秀頼を抱いて庭に飛び出し、辛うじて助かりました。伏見城は全壊して、死者は数百人に及んだといいます。無理な朝鮮出兵で疲れていた諸大名は不満を募らされていた。豊臣政権崩壊を早めたのはこの地震では?人心は徳川へと移っていきました。

佐賀藩を「軍事大国」に変えた台風(1828年のシーボルト台風)は、5メートルもの高潮を呼び、佐賀藩の人口の2.8%にあたる1万285人が死んだといいます。こうした大きな被害が鍋島閑叟の改革をよんだ。明治維新の時全国で一番近代化に成功した佐賀藩。

昭和南海地震(1946年)で森繁久彌が遭遇した大津波、宝永地震(1707年)が招いた富士山噴火、史料に残された記録を紐解くともう一つの日本史がみえてくる。富士山の火山灰はどれほど降るのか、土砂崩れを知らせる「臭い」、地震の前兆は先達が書き残した貴重な記録を紐解き災害から命を守る知恵を集めている。東日本大震災でも田老町の防潮堤と普代村の防潮堤は対照的だ。一方は「田老の長城」と呼ばれる長さ2.433km、高さ10.45mの防潮堤、実際は15.9mの津波と戦うには無理があった。普代村は明治三陸大沖津波、昭和三陸沖大津波で大きな被害にあっている。

和村幸得(故人)という村長がいた。昭和8年の昭和三陸沖大津波を経験していて防潮堤を高さ15.5mにこだわって、県、国に陳情をすると共に、防潮堤の設置場所についても検討をして設計にも直接関わって普代村の防潮堤を完成させていた。東日本大震災では死者0、行方不明者1という被害ですんだ。過去の経験を十分生かしたこの村長の熱意と当日水門を手動で閉めに走った警防団員のお陰とか。
地震、火山の噴火、台風、土砂崩れ、洪水など自然災害の多い日本、先人達がその災害から何を学んできたか?学ばなかったか?科学技術はともすると机上の空論に陥りやすい。論文で間違っていても直せば良いだけ。でも実際はそれによって大きな被害を受ける。人の生き死が掛かっている。実際起きたこと、津波の高さ、などいろいろの痕跡が残っている。(古文書、石碑など)これを素直に読み解いて、後世に残していかないといけない。防災用品を揃える前にやるべき事では?自然災害はそれに遭遇しないように「まず逃げること」的確なタイミングを判断すること。まず「命あっての物種」
自分の住んでいるところの地形、歴史、言い伝え、古文書を紐解いてみよう。200ページ足らずの本ですが、中味は非常に濃い本です。

本書より
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「すべての真の歴史は現代史である」(中略)人間は現代を生きるために過去をみる。すべて歴史は現代の目で過去をみて書いた現代の反映物だから、すべての歴史は現代の一部といえる。

目次
まえがき――イタリアの歴史哲学者を襲った大地震
第1章 秀吉と二つの地震
1 天正地震と戦国武将
2 伏見地震が終わらせた秀吉の天下
第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火
1 一七〇七年の富士山噴火に学ぶ
2 「岡本元朝日記」が伝える実態
3 高知種崎で被災した武士の証言
4 全国を襲った宝永津波
5 南海トラフはいつ動くのか
第3章 土砂崩れ・高潮と日本人
1 土砂崩れから逃れるために
2 高潮から逃れる江戸の知恵
第4章 災害が変えた幕末史
1 「軍事大国」佐賀藩を生んだシーボルト台風
2 文政京都地震の教訓
3 忍者で防災
第5章 津波から生きのびる知恵
1 母が生きのびた徳島の津波
2 地震の前兆をとらえよ
第6章 東日本大震災の教訓
1 南三陸町を歩いてわかったこと
2 大船渡小に学ぶ
3 村を救った、ある村長の記録
あとがき――古人の経験・叡智を生かそう

閲覧数2,608 カテゴリ本に出会う 投稿日時2016/07/26 23:50
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