堀ちえみさんの舌がんのニュースを見て思い出した人がいる。 法政大学文学部地理学科の山口不二雄先生である。 私が法政大学で社会科の教職課程を学んでいたときに「人文地理学」の先生としてお世話になった。 人文地理学の中でも経済地理学が専門であられたようだが、授業ではカタクリの話が一番印象に残っている。 私が学んだ法政大学多摩キャンパスは東京都町田市と八王子市と神奈川県津久井郡城山町(現相模原市緑区)にまたがる広大な敷地である。 カタクリはその城山町の名物であり、多摩キャンパス周辺地域の自然を象徴する植物の一種であるように思う。 山口先生はカタクリを愛し、カタクリを守ろうとしておられた。 カタクリに限らず、自然を愛し、自然を守ろうと。 当時、多摩キャンパスでは総合棟と経済学部棟の間の道路を跨いで両棟を結ぶペデストリアンデッキが計画されていた(私の卒業後、実際に工事が行われ完成している)。 山口先生は工事予定地の道路脇斜面が類まれな自然の宝庫であり、珍種や新種の植物が発見されていると仰っていた。工事によってそれらの希少な植物が絶滅してしまうことをとても心配されていた。 山口先生は休みの日に多摩キャンパスを訪れ、多摩キャンパスの自然を自ら調査されていたから、そのようなことをご存知だったのである。 経済地理学の研究者であるとともに、自然地理学の臨床の研究者でもあり、自然を愛し、自然を守る活動家でもあった。 というのが、私の印象である。 その山口先生の娘さんと教育実習で一緒になったとき、山口先生が舌癌と闘病されていると教えられ、とても心配した。しかも、山口先生のご自宅が私の実家(当時の自宅)のすぐ近くにあることもその時知ったのである。 その後、山口先生のご病気はどうなったか、私はずっと心配していたが、 結局、山口先生にはお会いすることはなかった。 舌癌からは生還されていたようだが、2014年に旅立たれたとのことである。 <追悼文> 山口不二雄先生のご逝去を悼む In Memory of the Late Professor YAMAGUCHI Fujio (1947-2014) 中俣均,法政地理,2015-03 http://jairo.nii.ac.jp/0044/00009607 |