書き込み数は278件です。 | [ 1 ... 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ... 28 ] | ◀▶ |
第十二話「社会科学モデル国家を支えるコミュニティ・プラットホーム」 中村の発想の原点は、高校の授業で教員の畑井克彦(58)が話した北欧スウェーデンにおけるコミュニティモデルがあった。 経済学者の神野直彦が、スウェーデンの首都・ストックホルムから100キロほど離れた小さな町を訪問した時のことである。ヨーロッパのどこにでもあるような小さな商店街に来ている町の住民は、「田舎だから物価が高い」とこぼしていた。ストックホルムはそう遠くないのだからなぜ買い物に出かけないのかと訊くと、住人たちは「そんなことをしたら地元の商店が潰れてしまう。商店街 … [続きを読む] |
第十一話「小さいからこそできることがある」 もう一方のグループでは、自称・地味な主婦の山田直美(43)が、高校3年生の中村優希(17)とマラソンが趣味で持久力が自慢の大学生・前田真生(18)という若いイケメンに囲まれ上機嫌で語っていた。中村が通っている高校では1年生が必須、2・3年生は選択で、情報科の授業として社会人基礎力養成のために「地域活性化」をテーマとしたプロジェクトに取り組んでいる。その中で中村は、市民数千人を動員する恒例イベントの総括を任される逸材だ。商店街活性化から地域連携創造まで、その守備範囲は広く思考は柔軟だ。 「おばちゃんが … [続きを読む] |
第十話「すでにそこにある未来」 田中隆祐のテーブルは、ブレスト段階から具体的な事例を引き出した議論が沸騰していた。ひとつのグループは、お城の下でイタリアンレストランを開くオーナーシェフの宮越誠(44)、ボランティアで地域SNSの運営管理を担う岡本早苗(52)、広告代理店志望の大学生・田中聖也(19)の3人だった。岡本の「ランチパスポート(ランパス)って利用したことありますか?」という発言で火ぶたが下りた。「参加店のパスポートのついた本を1,000円くらいで買って、その中に掲載されているメニューがワンコイン500円で食べられるんです。わたしのご近所では3冊目 … [続きを読む] |
第九話「潜在化したリソースの可視化」 「ひょっとしていろりさんのホテルには、すごいジオラマありませんか?」。突然のフリに小寺は驚いた。「なんで君が知ってるの?」。「うちの大学には『鉄道模型サークル』という同好会があって、ぼくもその一員なんです。小さな頃から、ずっとプラモデル作ってます。メンバーのひとりが偶然『いろり夢鉄道駅づくり作戦会議』という地域SNSのコミュニティを見つけて、話題になっていたところだったんです」。それは小寺が地域SNSで、ジオラマづくりの仲間たちと交流している掲示板だった。外部公開になっているので閲覧自由、 … [続きを読む] |
第八話「多様な立場が生み出す新鮮なアイデア」 和崎はアイデアソン実施の概要とその後にセットした大学生たちとの交流会について、いつもの地域SNSの友達である木多見哲夫(54)に相談した。木多見は地方自治体の外郭団体に勤務しながら、さまざまな地域活動に積極的に参加するだけでなく、地元の劇団で舞台にあがる役者であり、県が住民の参画と協働による地域づくりを推進するために設置した「地域ビジョン委員会」の委員長を務めるという素晴らしい人材で誰もから慕われる人格者である。和崎がいつもなにかと頼りにしているキーパーソンのひとりだ。毎年GWに実施する … [続きを読む] |
第七話「三方よしの上手をいこう」 古家と津川と井上凌(20)は、和崎の事務所のミーティングテーブルを4人で囲んでいた。政夫のレストランで相談した企画を、より実現に近づけるための助言をもらうためである。このミーティングのファシリテーターは、前回はあまり発言せずに食欲に走っていた若い井上を古家は指名していた。井上の自宅が和崎の事務所に一番近いこともあるが、EDT企画を説明することでプレゼンテーション能力を付けさせようという先輩の配慮だった。古家たちの指導を受けた井上は、企画を10枚のパワポにまとめ、かつ20分ですべてをきちんと整理して見 … [続きを読む] |
第六話「レストランの空白時間を埋めよう」 「信頼できる情報もいいけど、私たちのわがままも聞いてもらえるといいな~..」。ワインでほろ酔い気分になった泰子がつぶやいた。「そのわがままを聞かせてもらいたいんですが」と田中が応じると、泰子は申し訳なさそうにみんなに語り始めた。 「うちのレストラン、知ってる通りランチタイムはすごく忙しい。でもなかなかランチのお客さまがディナーにつながっていなくて、肝心の夜はパラパラって感じの日が少なくないの。たまにテーブルが満席になることもあるけどね。そして、ランチのお客さんが引ける午後2時を過ぎると夜 … [続きを読む] |
第五話「大学生だからできる地域貢献」 もともとお酒が飲めなかった泰子をいっぱしのワイン通に仕立て上げたのは、大学時代からの親友・小島妃佐子(45)だった。政夫が修行していた寿司屋のお誕生会の幹事も彼女なら、ふたりを結びつけたのも妃佐子だった。若い頃から無類の日本酒女子で、お誕生会でも純米酒を名指しで立て続けにオーダーし、ひとつひとつの酒蔵の蘊蓄まで披露するという女傑だった。蒸留酒系にはあまり強くなかったが、ワインはソムリエはだしの知識と味覚を持っていて、泰子は妃佐子についてまわるうちにワインの味だけは分かるようになったという。 「 … [続きを読む] |
第四話「宮崎から来た天使」 政夫のつくる「まかない」は豪華だ。前日仕入れた地場の野菜や魚介類を中心に、以前と同じように本格的な創作イタリアンができあがる。同じ麺でもパスタばかりではなく、たまにはラーメンや沖縄そばが食べたくなったときは、泰子シェフの出番となるが、政夫の気持ちは開店以来ずっと書き続けて12冊目になる新しい「料理メモ」にある。 長女の幸枝が高校を出てから地元の郵便局に勤め、昨年、局長さんの紹介で結婚。今は主人が栄転して東京暮らしになった。大学二年生になる長男の大知も関東の大学に進学し、休みの度に実家に戻ってレストラ … [続きを読む] |
第三話「オーナーシェフの悩み」 レストラン開店から1年が経とうとしていたある日、地元の新聞社の女性記者から取材の電話が入った。土生仁巳(はぶ・ひとみ) さんは、経済を身近に感じられるよう、まちづくりを切り口に連載していて、今では毎週の記事を楽しみにしている読者がファンクラブをつくるほどの人気記者。最初に電話を受けた泰子も、偶然そんな読者のひとりだった。メールで届けられた取材の内容を政夫と泰子で検討して、土生さんにはお昼を抜いて午後2時にお店に来てもらうように伝えた。 記事の予定見出しは「地元の素材で日本一の創作ランチ-まちづくりレ … [続きを読む] |
[ 1 ... 4 5 6 7 8 9 10 11 12 ... 28 ] | ◀▶ |