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2008年12月13日(土) 
前々回につづいて、椎名誠。
ビール関係のこういうの、好きです。
なお、もとの本は10年くらい前、まだ20世紀の時分に購入したものです。

 > 今年はサントリーのスーパープレミアムというビールに出会って嬉しかった。
 > 府中工場でしか手に入らない逸品で、小瓶しかないようだが、
 > これを大ぶりのグラスにとくとくとくとくじゅわー(泡のふくらむ音)と注ぎ、
 > いっとき全体が鎮静化するのを待っておもむろに「くいくい」やるとき、
 > まあいっちゃあなんだが人生の至福というものをつくづく感じる。
 > つらいことも多い人生だが、しかしこういうヨロコビもあるからなぁ・・・
 > と素直に頷くのである。
 > 町で夕方の時間を迎える日は、生ビールのある店を探す。
 > このところ生ビールを出す店が急に増えたようで“生ビール命”の当方としては
 > まことによろこばしい限りである。

とか、

 > そういうとこは、生ビールはまずいが酒の肴は旨い、というような例はまず皆無で、
 > 要するに一事が万事なのである。だから一発目の生ビールが勝負なのだ。
 > で、勝負!
 > いやはやよかった。ジョッキがきめこまかくて大、中、小とあって、
 > 中をたのんだら、札幌のビアホールやドイツのレストランなどで主流の、
 > 把手のついていない大ぶりのグラスで、泡立具合も泡の加減もまことによろしい。
 > いかったいかった・・・・と一人でよろこびながら、
 > 目をつぶってうぐうぐとやった。
 > 鯖のへしこ、という肴がうまかった。鯖のぬか漬を焼いたもので、
 > これは弁当のおかずにしても実にうまそうだ。
 > 日本海のいかも絶品。路地をへだてたどこかの店から聞こえてくる
 > カラオケの演歌も本日は〝いい仕事〟をしている。一事が万事なのだ。

あるいは、

 > ピータンとあんかけカタヤキソバに生ビールを注文した。
 > 大柄な派手な化粧をしたその店のおネーさんはおっそろしく愛想が悪い。
 > 怒ったようにブスッとしてコトバが何もない。
 > ただもうぞんざいにメニューを差しだし、注文すると黙って店の奥に去っていく。
 > ま、でもしようがないか、と思いつつ本を読んでいると、やがて生ビールとピータンがきた。
 > この素早さはなかなかいい。
 > ピータンの上に細切りネギがそえられ、油のまじった醤油がかかっていて、
 > 辛子を少しつけて口にすると、これがまことにねっとりとしてエキゾチックにうまい。
 > 生ビールもいい冷え具合で先週の松本駅前びしゃびしゃ生ビールと雲泥の差である。
 > ジョッキでなくて大ぶりのグラスというのもよろしい。
 > 続いて出てきたあんかけカタヤキソバは、一見単純なつくりのように見えたが
 > ひと口たべてびっくりした。内にひそんだ豊潤な切れ味とでもいうべきか、
 > カリカリチリチリしてビールによく合う。生ビール三杯のおかわりをした。
 > 大柄なおネーさんは最後まで無愛想のかぎりであったが、しかし
 > そのときフト思ったのは、とてつもなく愛想がよくてサービスがよくて、
 > しかし出される料理は途方もなくまずいのと、こういう店とどっちがいいか・・・・
 > ということであった。

氏の文章、《全体的にひらがなが多いなぁ、、》と思っていても
「醤油」などはきっちり漢字で書くのですねぇ。
 

閲覧数1,728 カテゴリ食べる前に撮る コメント0 投稿日時2008/12/13 21:41
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