指導者の名言‥横浜高:渡辺元智監督。 「二割しか打てない打者にそれ以上を要求するとその二割が打てなくなる。監督が使っている以上は二割でいいんです。」 高校野球ではときとして、二割くらいのアベレージしか出せていない人でも使わざるを得ないケースがある。なぜなら二割打者でもいろいろなケースがあるからだろう。「打率は二割でも勝負強さがすごい=例えばアベレージは二割でも得点圏打率が高く、切り札として信頼性が高い」とか「元々力はあるがスランプで低迷している、なんとかそれを打開してほしい」などなど… 渡辺監督のケースは実体験からもきていた。 過去(具体的には80年夏に優勝したとき)こんなケースがあった。ある選手を「コイツがこんなところで結果を出してくれそうだ」という感じで起用したようだ。ところがいざとなるとその選手は震えている。渡辺監督はその選手を一旦落ち着かせた上で「オマエは2割しか打てなかったかもしれない。だが、その2割をここで出してくれ。相手は試合を終わらせたがっているだろうからストレートを投げてくる。それを思い切り叩け。」という話をしたらしい。 おそらくそれでダメなら仕方ないということだろうと思うが、果たしてその選手は、1点リードを許したその試合で逆転の口火となる同点打を放ち、次の決勝戦につなげた。 余談だが、それにしてもプレッシャーに震えていたその選手を落ち着かせるのに、その選手の胸に手をやってその震えをおさえてから話に入るというのがまた粋なやり方だ… 「2割しか出せない選手に3割を要求すると2割が打てなくなる。起用する以上は2割でいい。」 ただ、その全てをここで出してほしい… 渡辺監督はこれに気づいたとき、実力にあった選手起用の仕方、試合への臨ませ方、そしてまたその選手にどうやってベストの力を出させるか…そういったことを、また一つ改めてみつけたのかも知れない。 |