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2011年12月09日(金) 
『「脱原発」成長論 新しい産業革命へ』
金子勝著、筑摩書房、1400円+悪税

気鋭の経済学者としてテレビでも活躍している金子氏による
脱原発と経済成長が両立することを説いた好著。

このなかで金子氏は
原発事故後の政府の対応が
バブル崩壊後の銀行の不良債権処理
ひいては太平洋戦争での大本営発表に通じているという。

そこに共通するものは「無責任」
だれも原因を明らかにしようとはしない。
だれも責任を取ろうとしない。
そのことがさらに状況を悪化させている。


一方、世界に目を転じれば、
ふたつのことが同時進行している。

ひとつは、リーマンショックにはじまる世界的なバブル崩壊
もうひとつは、「第4のエネルギー革命」と言われるほどの
化石エネルギーから自然エネルギーへの転換だ。

世界的なバブルの崩壊により
アメリカ経済の「日本化」が始まっているという。
ということは、これから20年間アメリカ経済が
成長しない、できないことになる。

EUでも、ギリシャ危機に始まる負の連鎖が
イタリア、ドイツへと拡大している。

こうした動きは、
右肩上がりの経済成長を前提とする資本主義経済が
限界を迎えつつある、ということではないだろうか。


そのような欧米にあって、
ぐんぐん成長している産業が再生可能(自然)エネルギーだ。

温暖化対策として、CO2削減の要請
原発事故以後の石油価格・石油価格の高騰も
再生可能エネルギーの追い風になっている。


未だ「原子力発電は安い」論を捨てない人には
大島立命館大教授の調査結果
核リサイクル費用・核廃棄物処理費用を含めれば
原子力発電がもっとも高くなることを引用・紹介している。


この本の最後で金子氏は
東日本大震災からの復興も提言している。
地域分散ネットワーク型経済による
地域主体の復興だ。

我慢強くて
でも、どこか国や東京にぶら下がっているようにも見える
東北の人たちに
「自分で考えて、自分で動け」
というのは、ちょっとハードルが高いようにも見える。

でも、そうしなければ
自分や家族の安全や健康を守ることができない
原発事故は、そのことを明らかにしてしまった。


私たちが支援できるのは
東北の人たちが自ら決断し、行動するために
必要な情報や資源を提供することなのだろう。

* * * * *

ちなみに金子氏によれば
TPPは「開国」ではなく、
戦前のブロック経済の焼き直し、なのだとか。

民主党もアメリカ追随主義に回帰したのでは
いよいよ自民党との違いがなくなった、ということだ。

閲覧数9,238 カテゴリ書評 コメント0 投稿日時2011/12/09 14:59
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