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2016年09月21日(水) 
いまこそ見る価値あり!
スタンリー・キューブリック監督「フルメタル・ジャケット」

 東京の横田基地からB52戦略爆撃機が飛びだっていた頃、子どもだった私にはベトナム戦争は他人事だった。
だからベトナム戦争の映画も、コッポラ監督の「地獄の黙示録」でお腹いっぱいになってしまい、本作品には食指が動かなかった。

 公開から30年たった今の方が、この映画は自分事としてびんびんに伝わってくるものがある。
安保法制ができたことで親族やひょっと自分までも戦争に取られるかも知れないから。
今、騒ぎになっている辺野古(沖縄の新米軍基地建設予定地)に来るのは、この映画で取りあげられている海兵隊だから
(沖縄にあるアメリカ軍基地の75%が海兵隊のものだという)。
 
 前半は、アメリカ国内での新兵訓練が描かれる。
ちゃらちゃらした今時の若者たちがバリカンで丸坊主にされていく冒頭シーンが象徴的だ。
中年の教官は、威圧的に(問答無用に、時には暴力を用いて)彼らから自尊心を奪っていく。
旧日本軍と何ら変わりない。

 前半主人公の「ふとっちょ」君は、にこやかな表情を否定され、運動能力が劣るためにしごかれ、どつき回され、「できないのは小隊の連帯責任」とされてしまったことで夜中に仲間からリンチを受けることになってしまう。
 「ふとっちょ」君は射撃に才能を開花させるが、時既に遅く、精神を病んでいた。
訓練所卒業の前夜、「最愛」の銃で教官を撃ち殺し、自らの命も断ってしまう。

 後半はベトナムが部隊となる。
前半で「ふとっちょ」君のめんどうを見ていた「ジョーカー」が主人公となる
(前半で、反骨精神の故に教官から「ジョーカー」と名付けられていた)。
彼は、学生時代に学校新聞を作っていたことから広報班に配属になる。
民間のジャーナリストとは違って、もっぱらアメリカ軍の戦果を伝えて、兵士の志気をあげることを活動の目的としていた。

 ここでも「ジョーカー」は反骨精神を発揮。編集長に疎まれて前線に送られることになる。

 ヘルメットには「殺すために生まれた(Born to Kill)」と書いておきながら、
胸には鳩足ピースマーク(反戦)のバッジをつける「ジョーカー」は、
司令官にからまれたりもするが、
さっぱりとした性格の故にすぐに気に入られたりもする。
そして従軍した小隊は訓練校の同期が指揮していた。

 前線出る前のひととき、小隊の仲間とつるんでいると、ベトナム人女性が「性」を売りに近づいてくる。
「ジョーカー」は率先してからかったりもする。

そのようすをカメラにおさめようとした同僚は、
ベトナム人の若者にカメラをかっぱらわれる。

といった、兵士たちの休日も丁寧に描かれている。

 一方で北ベトナム軍の精鋭ぶりも描かれる。
戦車とともに進軍していたにも関わらず
司令官は狙撃されて命を落とす。

「ジョーカー」の小隊は、やがて道に迷い、
本隊とはぐれたところを攻撃される。

あたりは廃墟となった倉庫群だ。

同期の小隊長は物陰に隠れていたにもかかわらず、
ちょっとした隙間をすり抜けるように狙撃されて命を落とす。

 物量にものを言わせた反撃で北ベトナム兵の多くは逃げ出したが、
凄腕の狙撃手(スナイパー)だけは残って、
アメリカ軍兵士を一人またひとりと倒していく。

アメリカ軍の側にもランボーみたいな男がいて、
機関銃を乱射しながら狙撃手のいる倉庫へと残された仲間をひっぱっていく。

 そして突入。
狙撃手のいるところに最初に到達したのは「ジョーカー」。

なんと、凄腕狙撃手は若いベトナム人の女だった。
あわてた「ジョーカー」は機関銃を落としてしまう。
絶体絶命。

 この映画で描かれていることは、現在進行形でシリアやパレスチナで行われている。
映画でアメリカ軍は倉庫跡から攻撃されたが、
シリアやパレスチナ、かつて日本軍が攻め入った中国では
民家からも弾丸が飛んできた。

シリア軍兵士もイスラエル兵士も旧日本軍兵士も
反撃のために銃を乱射し、手榴弾を投げ込む。
そこが女子どもしかいない民家であったとしても
(攻撃してきたのが隣家であったとしても)。

 安保法制により、近い将来、
日本の自衛隊もこうした「攻撃」に加わることになる。

そう言う意味で、「フルメタル・ジャケット」は、
とても今日的な作品であった。

監督・制作 スタンリー・キューブリック 
脚本 スタンリー・キューブリック、マイケル・ハー、グスタフ・ハスフォード
原作 グスタフ・ハスフォード『ショート・タイマーズ』
制作総指揮 ヤン・ハーラン
出演 マシュー・モディーン、ヴィンセント・ドノフリオ、R・リー・アーメイ他
アメリカ1987年公開
 

閲覧数1,118 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2016/09/21 21:31
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