『東北--つくられた異境』川西秀通著、中公新書、740円+悪税。 わたしは学生時代を仙台で過ごしたので、東北のどこへ行っても、言っていることの半分はわかる(残り半分がわからないのは、さらにまた地域別の方言があるからだ)。 本書は、東北地方というこの地域を一体的にとらえる概念は明治時代につくられたもので、「遅れた貧しい地域」という偏見は20世紀初頭のたび重なる飢饉によって形成されたことを明らかにする。 東北各地の地域性は多様性に富んでいて、東北を一体的にとらえることは現実的でないと、著者は訴える。 かつては一体的にとらえられていた中部地方が、今日は東海・北陸・甲信の3地方に分けて扱われるようになっていることからも大いにうなずける。 これは、東北地方だけの問題ではなく、全国を一体的にとらえようとした近代日本の問題であり、霞ヶ関を地方別に分割しなければ克服できないことは容易に想像できるのだった。 |