原発社会からの離脱 自然エネルギーと共同体自治に向けて 宮台真司×飯田哲也著(講談社現代新書)760円+悪税 帯に「これからのエネルギーと/これからの政治を語ろう」とあるように、3・11福島第一原発事故のあとの社会をテーマに、気鋭の社会学者と気鋭の自然エネルギー活動家が語り合った対談集。 興味深いのは、これまでの飯田哲也の著書ではあまり語られてこなかった彼自身の出自が語られていること。山口県徳山市の郊外で育ち、母親が家族を捨てて出奔。京大では工学部だったものの、山岳部で山登りをしながら仲間と答のない問題に議論を重ねる。神戸製鋼から原子力ムラ中枢(電力中央研究所)に出向して経済産業省と電力会社の癒着の現場を目の当たりにしたばかりか、IAEA(国際原子力機関)のルール改定について「生き字引」となる。 そこから飛び出した理由を飯田氏は世代論で答える。上の団塊世代は原子力ムラに過剰に適応し、30代の若い世代は「自分の選んだ道に文句があるか」と青年将校みたいになるのに対して、飯田氏の世代は飛び出すにせよとどまるにせよ、原子力ムラの見たくないものが見えてしまって迷っているという。 青年将校に限らず、この本のなかでは、原子力政策が戦前の戦艦大和のような時代遅れのものであり、それを推し進めているのは、当時と同じく、リーダーなき官僚主義だという。 エネルギーを縦糸としながら、社会を横軸としたことで、ともすれば平板な話になりがちな脱原発論が立体的になっている。ボードリヤールなど社会・思想のことを話す宮台氏に飯田氏がちゃんとついていっているのは、新鮮な驚きだが、だからこそこれだけ混乱している3・11後の社会にあって飯田氏はぶれることなく屹立し続けることができるのだろう。 脱原発を社会や時代の転換としてながめる上での指標となる好著。 |