原きよさんは大分舞鶴高校の後輩で、元OBS大分放送のアナウンサー。 現在は三鷹を拠点に朗読ライブ活動をされています。 三鷹ゆかりの作家といえば太宰治。 晩年、三鷹に居を構えていました。 原きよさんは、太宰の故郷、津軽でも朗読会を開いたり、太宰の乳母を生前訪ねたりと 熱心に活動されています。 今回取り上げられたのは「道化の華」。 1936年(昭和11年)処女作品集『晩年』に収録されています。 (最初の作品集に『晩年』と名付けるとは太宰治らしい) 太宰治自身が昭和5年に神奈川県で引き起こした心中事件がモチーフになっています。 しかし 主人公に葉三(ようぞう)という名前をあたえ 太宰とは違うキャラ、 私小説とは違う小説スタイルにしよう、と苦心しています。 その試みはどこまで成功したのか。 太宰治自身も作品中に登場し、 その難しさを吐露しています。 黙読では読み飛ばしていたものが 朗読では立ち上がり 新たな発見があります。 葉三は、心中事件で運び込まれた病院で回復し 仲間とふざけ、はしゃぎ 婦長から(間接的に)怒られたりします。 心中相手の女は死んでいるにもかかわらず。 ふつうに考えれば、不謹慎。 芥川賞を狙った作品の主人公としては 「ひとの死」というものが全然魂で受けとめられていない。 選考委員だった川端康成もそのことに気づき 太宰には芥川賞を与えなかったのではないだろうか。 原きよさんの朗読は、アナウンサーらしく、そつがなく、朗々として心地よい。 暖かい日差しの差し込むレストラン(三鷹モダンタイムス)だったので、ついうとうとしたくなるというもの。 ときどきはお客さんをびっくりさせる演出があってもよかったのではないだろうか。 |