『移動祝祭日』ヘミングウェイ、高見浩訳、新潮文庫 平成21年(2009年)2月1日発行、590円+税(360円+税) ブック・オフ伊勢佐木町店 「移動祝祭日」とは「a Movebale Feast」の直訳。 「もし幸運にも、若い頃、 パリで暮らすことができたなら その後の人生をどこで暮らそうとも、 パリはついてくる。 パリは移動祝祭日だからだ」 と、ヘミングウェイ自身が巻頭言で語っていることに 由来している。 この巻頭言が表すように 本書は 晩年のヘミングウェイが若き日のパリでのエピソードを 短編小説風にまとめたもの。 最初はアメリカの新聞の通信員をしていたが それも辞め カフェで1日小説を書いて過ごす。 カフェにはフランスの名だたる詩人たちが集まり 先に小説家として名をあげた スコット・フィッツジェラルドもやってくる。 時には最初の妻とセーヌ川を散歩 やがて長男のバンビ(ジョン)が生まれ、 2番目の妻となる女も忍び寄ってくる。 エピソードの一つひとつを まるで映画のワンシーンのように ヘミングウェイは蘇らせようとする。 ノスタルジーもなければ センチメンタルもない。 やがては分かれることになる 最初の妻ハドリーさえもが 淡々と、時には魅力的に 描かれている。 フィッツジェラルドとのエピソードは印象的で 彼が最愛の妻ゼルダに対して 浅からぬ葛藤を抱いていたことがうかがえる。 蛇足ながら 私、山田岳にとっては 京都が移動祝祭日ということになろうか。 そんなことまで考えた。 |