じっぴコンパクト新書161 『出雲大社の巨大な注連縄はなぜ逆向きなのか?』 久能木紀子著、実業之日本社、2013年9月19日発行 762円+悪税 去年60年ぶりの遷宮が行われ、 今年は代々宮司をつとめる千家家と天皇家との婚約が発表されるなど 何かと注目を集めている出雲大社についての ガイド本ではあるのだが。 「出雲大社をめぐる謎」 「大国主大神をめぐる謎」 「出雲大社成立の謎」 と 「謎」をキーワードに 読む者の知的好奇心を刺激してくる。 神殿は南向きなのに 御祭神、大国主大神は神殿の中で西を向いて 参拝者を向いていない、というのは、 よく知られた謎のひとつ。 哲学者、梅原猛はかつて『神々の流竄(るざん)』で オオクニヌシが大和から出雲に流されたため と考えた。 これに対し、久能木は 鹿島神宮の御祭神、武御雷もまた参拝者を向かず 東の海を向いていることや 日出る伊勢神宮と日没する出雲大社という 東西関係の中で見ようとする。 「神庭荒神谷遺跡」から358本もの銅剣が発掘されて 梅原の仮説は自身で見直しを迫られた。 出雲大社境内からも直径1mを超える大きな柱の根元が 3本まとめて出土し 平安時代に存在したという伝説の巨大神殿が 現実のものとなってきた。 専門外であるにもかかわらず 考古学から見た出雲に言及している点は 評価されていいだろう。 そのうえで「天皇家の側に出雲の力を必要とする何かがあった」と 久能木は言っている。 「巨大な注連縄はなぜ逆向きなのか?」は もうすこし突っ込んだ考察があっても良かったのではないか。 その点だけが惜しまれる。 |