参考文献『エビと日本人』村井吉敬、岩波新書
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/43/7/4300200.html
マングローブは河口など川の水と海の水とがまじわる湿地にできる森林のことです。 世界では東南アジア、インド沿岸、南太平洋、オーストラリア、アフリカ、アメリカに 分布しています。 日本でも、沖縄県と鹿児島県に見られます。 マングローブを構成する植物の多くは、 満潮時に水没する根の部分(呼吸根)が タコの足のように分かれていて幹を支えています(支柱根)。 満潮時は、アイゴやハゼの仲間(小魚)やエビが 呼吸根の間に身を隠します。 これらを食べるフエダイやオオウナギの仲間もやってきます。 干潮になると カニ、巻貝、二枚貝の仲間が姿を見せます。 (幹や支柱根に生活しているものもいます) コウモリやメジロ(小鳥)は、マングローブの幹や枝葉に 生息しています。 このように多くの生き物をはぐくんでいるマングローブですが 日本向けのブラックタイガー養殖のための開発や 木炭の原材料とする伐採のために 破壊が進んでいます。 萩谷準一(*)によれば タイでは、 1961年に367,900haあったマングローブが 1993年には166,692haと半減してしまいました。 タイ政府は 1988年の大洪水をきっかけに 1989年天然林の伐採を全面的に禁止、 1996年にはマングローブの伐採許可をすべて無効としました。 (それにもかかわらず、現在もたくさんのエビがタイから輸入されています) マングローブでは 川の上流から流れてくる有機物(枯葉や生物の死がいなど)が 分解されることから 多くのプランクトンに栄養を提供し プランクトンが小魚やエビ、カニのえさとなります。 一方、 この分解にたくさんの酸素が消費されることから 川底の下(地中)は嫌気性の環境となり 硫化水素が発生します。 マングローブを伐採してつくったエビの養殖場が 数年で使えなくなるのはこのためです。 マングローブの減少は 生態系に影響を与えるだけでなく 高波や津波の影響をもたらし 地域の生産性を減少させるなど 地域の人たちの暮らしにも影響を与えるようになったことから 近年、企業や環境NGOが協力して マングローブの植林が進められています。 環境省 フォレスト・パートナーシップ http://www.env.go.jp/nature/shinrin/fpp/database/pa…kaijo.html 萩谷準一(*) マングローブ植林大作戦連絡協議会事務局長 グラフは萩谷のデータをもとに作成 |