J-Theater「日本人作家シリーズ」語り芝居太宰治特集 「失敗園」「尼(『陰火』より)」「貨幣」 12月22日、小劇場楽園(東京・下北沢) 構成:原きよ 演出:小林拓生 能管演奏:やすだまこと 原きよは、何年か前、高校の同窓会で出会った 私よりも8年ぐらい下の卒業生。 一時、郷里大分の民放でアナウンサーをしていたというが 局アナのイメージからは遠い 小柄な、着物姿が似合う いくつになってもかわいらしい人だ。 現在は三鷹のケーブルテレビでレポーターをやりながら 好んで太宰治の小説の朗読会を開いている。 (太宰の故郷、津軽でも上演しているというから相当の入れ込みようだ) 2,3年前に初めて朗読会にうかがったときは 丁寧な、最初から最後までペースをきっちりと守る 正統的な朗読のスタイルであった。 それが、昼下がり、昼食後の時間ともなれば 眠気を誘うことにもなる。 そこで、芝居的な演出を取り入れてはどうかと提案してみた。 果たして次にうかがったときは ピアノ演奏とのコラボもあってか 一人芝居のような、朗読スタイルに変っていた。 (ブログを見ると、彼女の側にも演劇との体験的な出会いがあったらしい) そして今回は劇団J-Theaterとの共演 原きよは、太宰の小説を演劇として構成する作家であるとともに 「貨幣」では登場人物の一人(役者)となっていた。 3つの短編小説は、 太宰の実家の養育係たけが老後に海辺で見た蜃気楼とも 太宰がおでん屋で編集者と飲んでいる途中に 眠り込んでしまって見た夢とも 受け取れる構成で提示された。 「失敗園」は、家の庭に植えられた野菜たちのつぶやきや愚痴を 太宰が書き留めたもの。 ふむ。太宰の作品は会話が多く、芝居にしやすいようだ。 「尼」は、下宿の廊下に突然現れた尼が主人公の部屋に入り込む 少しホラーがかった不条理小説。 能管の音色が効果的に響く。 「貨幣」は戦前、戦中、戦後を生きてきた百円札が 自分を買い物で差し出した人たちを通して世相を語るもの。 原きよは長いセリフをかむこともなく 哀愁を帯びた大人の色気を漂わせながら百円札を演じていた。 終演後は続けてアフタートークがあり 中央大学岩下武彦教授と原きよが 杉並区に残された戦前の木造建築物にして太宰治の下宿「碧雲荘」の保存問題 (このままでは来年春までに取り壊されてしまう) について語り合った。 ソプラノ声の原きよがアルトになっていたのが??? 終演後に声をかけるといつものソプラノだった。 了 |