http://sns.yokohama150.jp/blog/blog.php?key=4638 このブログでも書きましたように、井上ひさしさんと29日にフォーラムでご一緒することになりました。 その井上さんの最新刊が3月に出た「ボローニャ紀行」(文藝春秋社刊) 井上ひさしさんが、イタリア・ボローニャに三十年来恋焦がれ、ようやく彼の地に降り立ち、精力的に市民の間を歩き回った2004年の記録です。 ボローニャは、ヨーロッパで最古の大学があり、ナチスから町を市民自身の戦いによって解放した誇り高いまちであり、精密機械の中小企業が網の目のようなネットワークを張り巡らせ、柔軟で開発力の高いクラスターを形成している地域であり、歴史的建造物を壊さずに使い続けるというまちの方針が徹底している、北イタリアの都市です。 人口は39万人です。 横浜市が政策として掲げている「クリエイティブシティ」=創造都市の先駆がこのボローニャです。 ボローニャ紀行から以下引用です・・ 「国という抽象的な存在でなく、目に見える赤煉瓦のまち、そしてそこに住む人たちのために働く、それがボローニャの精神」 「自分のせいでもないのに仕事や住まいを失ってしまうことがあります。ボローニャではこんな時”自己責任”なんて冷たいコトバは使わない。困っている人間がいたら、とりあえず手を差し出してあげる」 「使わなくなった公共の建物や土地を無償でボランティグループや社会的協同組合に提供するというのも、これまたボローニャ方式」 ===引用おわり=== 井上さんがホームレス劇団を訪ねたときのやりとりが素敵でした。 ===ここから引用=== 「どうしてホームレスのみなさんが芝居なんてものをするのですか?」 「仕事がなくなる、すむところもなくなる、すると人間はどうなるだろうか」 「・・・どうなりますか」 「自分の殻の中に閉じこもるようになる。自分と外部との間に厚いシャッターを下ろす。ところで芝居というものは、みんなが力を合わせることをしないと、できあがらない」 「つまり、芝居の熱が殻やシャッターを溶かす?」 「その通り。みんなでワイワイやっているうちに、心がやわらかくなり、自分と外部との境がなくなる。そして、そこへ観客の笑い声や拍手が加われば、自分と外部とが完全に溶け合って、だれもがもう一度、外部を信じようという気になるんだよ。芝居にはふしぎな力があるんだ」 ===引用終わり=== たんにパン券を配ったり、一時宿泊所をつくるだけではなく、人間の尊厳の回復というものまで見据え、ホームレスになったひとたちの内部にある「変わろう、変わりたい」という気持を、演劇という手法でやさしく楽しく育てていく取り組み。 これを市民自身が担っている。ボローニャの人たちって、なんて奥行きがあるんだ!という、こうした事例やコトバがたくさん出てきます。 創造都市って、別にアーチストのためだけのものぢゃない、ということがよくわかる。 さらに、地方金融機関の参画と、さまざまな手法を可能にするまちづくりのための新しい組織のわくぐみ(ボローニャでいうところの社会的協同組合)作りまで踏み込んでいかない、クリエイティブシティ政策はまだ未成熟であるかもしれません。 難しいことはさておき、自治体レベルでこれだけ頑張っているまちがあるのだということに励まされました。 井上さんのボローニャ紀行はNHKの番組のロケだったそうで、そのプロデューサーを担当した星野まりこさんが出版された 「都市を創る市民力~ボローニャの大実験」もより、くわしくて参考になります。 |