書評「木下順二戯曲選Ⅱ」 木下順二著 岩波文庫、1982年7月16日初版第一刷、450円(100円) 伊勢佐木町商店街の古書店で購入 古書店まえのワゴンセールで 目に飛び込んできた一冊。 カバーはなく 帯だけの、昔ながらのスタイル。 戯曲はあまり得意なほうではないが 本から呼びかけられた気がして購入。 木下順二(1914~2006年(大正3年~平成18年)) 「夕鶴」で知られる劇作家。 (というのは後で知った) 評論も書いているし 明治大学の教授もつとめたらしい。 「風浪」は彼のデビュー作。 舞台は、明治維新直後から西南戦争までの熊本。 昨年の大河ドラマ「八重の桜」後半 熊本西洋学校の学生が同志社に転入してくる話があったが 彼らが熊本を離れる経緯も描かれている。 学校経営者は「和魂洋才」を学校のモットーにしていたが 一部学生はキリスト教に傾倒してしまった。 そして熊本にはまだ攘夷の名残のようなものがあった。 神風連の乱にしろ、西南戦争にしろ 時の政府を批判し、打倒しようとする者は後を絶たないが そのあと、どのような政府をつろうというのか ビジョンを描けたものはなかった そのことが浮き彫りにされる。 それでも最後に、木下順二は登場人物に言わせる。 「時勢ばつくる者ァ決して政府や県庁の官員だけじゃなか。(略) 貴公たい。俺たい。(略) 地租ば五厘下げさせた蓆旗(むしろばた)の百姓たい」 「俺ァもう頭の中だけで考える事(こつ)ァやめにした。。 人と議論する事(こつ)もやめにした。(略) とにかく大義ばうち忘れとる今の政府ば倒そうちゅういくさに、 俺ァ飛び込んでいく」 熊本弁が少々読みにくくもあるが 旧制中学校時代を熊本で過ごした木下順二のこだわりらしい。 「蛙昇天」 第2次大戦後、革新VS保守で政争を続ける政治家たちについての寓話。 現在の岩波文庫にはカバーがついています。 |