2016年3月14日の国会での山谷えり子参議院議員と安倍首相の、女性皇族の皇位継承問題に関わるやりとりは奇妙でした。不可解といってもいい。 発端は、国連女子差別撤廃委員会が日本に対してまとめた最終見解案に皇位継承権が、男系男子の皇族にだけあるのは女性への差別だとして、皇室典範の改正を求める勧告案を盛り込んでいた(後に撤回)ことです。 これを<女性である>山谷議員は「日本の伝統への無理解」とし、<小泉内閣時代にはキーパーソンだったはずの>安倍首相は「対日審査等で触れられていないことが最終見解案に出てきた」とプロセスとの整合性を問題にしました。 歴史上は持統天皇をはじめ、女性の天皇は何人も出ています。日本神話の最高神も女性であるアマテラスノオオミカミです。 男子に限る理由として必ず取り上げられる孝謙天皇と弓削道鏡との関係を「不適切」とするのは、娘を天皇に縁づけて生まれた子どもを次の天皇につけて意のままに操りたい藤原摂関家の戦略(個人の都合)です。 これを「日本の伝統」と言うのは、日本という国が藤原氏に私物化されていたことを認めるようなものでしょう。 10年あまり前、小泉首相の私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」は、女性天皇と女系天皇を容認し、長子優先を柱とした報告書を出しています。 当時、官房長官だった安倍首相はこの有識者会議に深く関わっていたはずで、首相となった現在、このときの報告書を現実化させる立場にあります。 「女性が輝く社会づくり」のシンボルとして、女性天皇を誕生させる。 これもまた、首相が唱える「戦後レジュームからの脱却」となるはずです。 |