長い間知りたくて知り得なかった言葉の感覚で「ウザイ!」というのがあって、女子中学生などがその言葉を使うときわめて強く突き放すような趣があり、その言葉を投げつけられたオジサンなどはどう身をおいていいか判らなくなるような「強さ」がある、というようなことをあるひとから聞いた。ふうんと思ったものだがそのまま忘れていた。ところが先日地下鉄に乗っていて本に夢中になっていたのだが、隣に座っている若い女性がずいぶん気忙しいのに気がついた。座ったまま忙しく「化粧」をしていて、鏡のついた化粧箱を開けたり閉めたり睫毛を直したり口紅をつけたりで、「忙しい」。手短に終わるかと思っていたがそれは延々と一駅分続き、脂粉がこちらの頬にも纏わりついてくるようで、大袈裟に見たりもしたが一向に「変化」はない。本に気持ちを戻したが、化粧箱の開け閉めで「匂い」がまたしても飛んできたとき、思わず「ウザッ!」と口の中で叫んだ。「そうか、この気持ちか」と思ったとたん、人を突き放すような「強さ」の「感触」を得たような気がして、思わずニヤリとしてしまった。気持ち悪い(キモイ?)オヤジだったに違いない。
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