亡くなった母は目が悪くなる50代半ばまで、ずっと点訳をしていました。 結婚する前に 社会福祉法人山梨ライトハウス(甲府市)で、点字を学んで以来、点訳のボランティアを続けていました。 母が手にしたひょうたん型の鉄筆。 カタカタとクリーム色の紙に打ち出されていく点字はとても不思議な暗号のようで、目をつぶって指で触ってみても、コドモだった私にはまったく区別がつかないのでした。 その文字を指先で「読む」ことができる視覚障害者の方の触覚の鋭さを想像し「すごいなあ」といつも思っていました。 そんなコドモ時代から数十年を経て(!)、2003年にわたしは新聞社のデジタル部門に配属されることになりました。 その当時のウェブサイトには「こえの新聞」というコンテンツがありました。 朝刊から夕刊時間帯にかけての主な県内・国内のニュースを20本近く、テキストベースのサイトにアップロードしていく作業です。 当時の読み上げソフトは今よりもまだ「発展途上」だったので、人名・地名をひらがなに直したり、意味の通らない読み方をしてしまうところを書き換えたり、テキストファイル制作に人手がかなりかかりました。 テキストを整形し、読み上げソフトで一通り読ませ、確認してからアップロード。 障害がある同僚が企画し、国内の新聞社のウェブサイトとしては、ほぼ最初の試みだったそうです。 ただ、あまりに毎日の作業の負荷が重く、現在のサイトにリニューアルした際に、中止せざるを得ませんでした。 先日、西区にあるナレッジクリエーション社の方たちのプレゼンテーションを拝見する機会を得ました。 http://www.vdsapi.ne.jp/ 母がこつこつとやっていた点訳や、数年前にとっても大変だった読み上げソフト用テキスト原稿制作のことを思い描きながらお話を聞きました。 ウェブサイトの好きな場所を、かなり自在に読ませることができる、音声ファイルを生成するのでポッドキャスティングにも活用が可能、Javascriptで簡便な動きをする、APIを公開しているなど、柔軟に設計されていて、コンテンツ提供者にも使いやすい仕組みのようでした。 特別な文法や技術がなくても、どんなひとでも、必要な情報を簡単に発信受信でき、意見を交換でき、共有できる仕組み。 そういうミッションを忘れない技術者の方たちによって、実はオンライン社会参加者の多様性が担保されていくのではないかと思いました。 |