池波正太郎の「鬼平犯科帳」というと、TVでは中村吉右衛門が「定番」ということになっていて、最も「鬼平」のイメージを伝えているとして、TVが原作を読ませ原作がTV、ビデオを見させるという果てしない「鬼平現象」を続けているが、そもそも池波は吉右衛門の父親の八代目松本幸四郎(後の白鸚)をイメージして「鬼平像」を創りあげたということは「よく知られて」いる。最近CATVで先代幸四郎の「鬼平」を続けて観ていると、現在の吉右衛門が「鬼平」の長男、辰蔵役を演っていて、そのひょうきんな息子振りが今の「鬼平」の若い頃だという気にさせて、「本所の銕」とも重なり合って、吉右衛門は当初「とてもじゃないが演れない」と臆していた「鬼平」役を、何年も親父の下で「準備」をして、「創りあげたのだ」という気がする。歌舞伎の「狭い」ともいわれる肉親の徒弟の世界は、この親子をして少なくとも現在の「鬼平」を創り、TVの中での「歌舞伎」を我々に愉しませてくれている、と思う。
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