彼の名を知ったのは 父の本棚にあった「原民喜全集全2巻」の背表紙。 意識したのは中学2年ころか。 しかしながら 原爆文学というレッテルが わたくしには逆効果で、手に取ることを躊躇していた覚えがあります。 高校時代に、愛読&投稿していた雑誌「ポンプ」で次の詩の作者を尋ねる投稿が掲載されました。 遠き日の石に刻み 砂に影おち 崩れ墜つ 天地のまなか 一輪の花の幻 美しい映像、と思いました。 私も「誰の詩だろう?」と知りたくなりました。 翌月号で「それは原民喜さんの”碑銘”という詩です」という答えを誰かが返していました。 (ネットのない時代の人力検索…) その答えを見て、へーっと思い、とっても重い全集を取り出して読んでみました。 「原爆文学」という回路では、私のばあい、彼の作品には出会えなかったわけで、偶然の出会いによって「自分が見つけた、すごいと思った」という感覚を持てたから、全集を読もう、ということになったのだと思っています。 不思議。 彼の作品を読んでいると、繊細だけれども冷静で、でも最後はやっぱり、何かを決定的に喪った欠如感を埋めることができない、そんなかなしみが全体を覆っているように感じます。 遺稿となった「心願の国」が、代表作とされる「夏の花」よりも私は好きです。 ※雑誌ポンプはこんな雑誌 http://www.asahi-net.or.jp/~pw2t-mnwk/Favorite/Pump…98211.html 主宰は橘川幸夫さんでした。最近あんまり出ていないな… http://www1.nttcom.co.jp/comzine/archive/netlife/ne…index.html |