向田邦子のドラマというと岸恵子を思い出します。物語の世界と”どんぴしゃ”で他の追随を許さないという気がいたします。そういう女優と巡り合えたのが私のとって幸せな巡り合いであったと思います。先日、彼女の若い頃の写真をみる機会に恵まれましたが、そりゃ、きれいのなんの!ああいう人を本物の女優というのでしょう。
主題からそれましたか? 失礼つかまつりました。
CATVで録りだめしておいた向田邦子のドラマシリーズで物語をいくつか観て、全くいい映画やドラマが「幸せなめぐりあい」で出来上がっているのだということを実感した。原作は向田で、演出や俳優はそのたびごとに違うのだろうけれども、たまたま観たこのシリーズの顔ぶれは久世光彦演出、俳優は田中裕子、加藤治子、小林薫、とほとんど同じで、そして単発で宮沢りえや森繁久彌まで出ていて、なんともいえない「滋味のある」ドラマシリーズになっている。特に「あ・うん」や「風立ちぬ」では、向田や久世が「人間」や「男と女」がもつ「避けられないもの」をきっちりと押さえていて、底知れぬ「現実」を感じる。映画などでは「贅沢な」顔ぶれは当たり前で、高い「品質」は珍しくないことだろうけれども、チケットを買う必要のないテレビドラマで観られるこの「品質」をもっと日常的に「観たい」と思うのは「贅沢」だろうか。しかし考えてみれば、「幸せなめぐりあい」が私たちの日々でもそう簡単に訪れることはないことを思えば、その「筋書き」だけでも熱心に書くことは「許される」ような、気がする。
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