「倉廩(そうりん)実ちて 則(すなわ)ち礼節を知り、衣食足りて則ち 栄辱(えいじょく)を知る」『管仲』
この言葉を簡単に「衣食足りて礼節を知る」と教わったものだから、私たちはもっと簡単にして、衣食足りて「から」礼節を知ろう、と貧乏だった若い頃はやみくもに「衣食」を求めて、「礼節」などは後回しにして「突っ走って」いた、気がする。今になって振り返ってみれば、確かに余裕も何もない頃は、それが「あたり前」と思っていたけれども、もっと考えてみれば、「量」と「質」を比較するように、もともと比較できないものを無理に「比較」して「あとさき」にしていたような気がする。確かなことは年をとっても「衣食」足りないと思っているうちは、「礼節」のことなど露ほども考えなくて、そのうちに人生が終わってしまうかも知れない。もともとない「あとさき」を考えるように促したのは、管仲先生か高校の漢文の先生か、はたまた私たち自身であったのか、ふとした折に考えて誰ともなく若干恨んでる。 |