以前東京に通勤していた頃、そろそろ「大江戸」からも離れたいと思っていたけれども、どうしても離れ難かったところに「銀座」があり、とりわけ「居心地のいい」バーには「故郷」のような馴染みがあり、そのうちの一軒が「銀座ガスライト」だった。井口法之さんというバーテンダーがいて、私にとって彼のつくるカクテル「ニューヨーク」はどこの「ニューヨーク」よりも一番だった。そうこうしているうちに、その井口さんが昨年日本バーテンダー協会の総合優勝者になり、今年はプエルトリコの世界大会に出るということになった。彼の「ニューヨーク」をもってすれば、「イイ勝負」ができるのではないか、と勝手に思っているけれども、「創作」も求められる「世界の味」はまた違うようで、なかなか「難しい」と「仲間」のバーテンダーの人が教えてくれた。しかし「勝負」はともかく、勝ち負けとは無縁の「居心地」を醸し出していたあの「ひととき」は、果たして「勝負」心などに「支えられる」ものなのかどうか、いまだに解らないでいる。
|