数年前にはまだ東京で仕事をしていて、会社の帰りに銀座6丁目にある「スウィングシティー」というジャズクラブによく寄っていた。あの頃、世良譲や北村英治などはもう「仕事」というよりは客と共にその夜を「酔いしれる」というような時間の過ごし方をしていて、そのときには食べるものも飲むものも美味く、そして流れるジャズも...「陶然」というのはこういうことかと思ったものだ。ある夜、ジョージ川口が演っていて、リクエストをしていいということなので、アート・ブレイキーの名曲「チュニジアの夜」を求めた。「オ!演ろう」と言ってくれて「激しく」、「完璧に」こなしてくれた、ことを思い出す。ジョージ川口は、そのとき75歳も過ぎていて、ブレイキーに挑戦するようなそのドラム演奏には「シビれた」。それから1年くらいしてからだろうか、彼の訃報を聞いたが、あの素晴らしい「チュニジアの夜」を私の心に残してくれたことに、今でも感謝している。
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