書き込み数は4件です。 | ◀▶ |
津島美知子「回想の太宰治」と太田治子「母の万年筆」を続けて読んで、複雑な気持ちになった。津島美知子さんはいうまでもなく太宰治の奥さんで、「天才」と言われた太宰治との生活の思い出を、女として妻として、淡々と、ときには「冷静に」男として夫としての太宰を見つめていて、太宰の「弱いところ」も見逃していない。太宰は山崎冨栄という人と心中をしたが、津島美知子さんは彼女のことも自分以外の女性のこともその「回想」にはほとんど書き残していない。太田治子さんは、太宰の代表作のひとつ「斜陽」のモデルになった太田静子さんという人と太宰との娘で、治子と … [続きを読む] |
大学生になったばかりの頃当然に貧乏で、東京から四国に帰るのに新幹線に乗れずに夜行の寝台列車に乗ったことがあり、眠れなくて食堂車に行きコーヒー一杯でねばっていると、何席か向こうに八代亜紀が独り(だったと思う)で食事をしていた。地方巡業の途中らしかった。手に何も持っていなかったので、ペンを借りてテーブルの紙ナプキンにサインをしてもらったことを覚えている。「これに?」と言われたけれども「すみません。何も持っていないので...」と言うと、気持ちよくサインをしてくれた。それを何年間か「宝物」にしていたけれども、いつの間にか失くしてしまった。 … [続きを読む] |
以前東京に通勤していた頃、そろそろ「大江戸」からも離れたいと思っていたけれども、どうしても離れ難かったところに「銀座」があり、とりわけ「居心地のいい」バーには「故郷」のような馴染みがあり、そのうちの一軒が「銀座ガスライト」だった。井口法之さんというバーテンダーがいて、私にとって彼のつくるカクテル「ニューヨーク」はどこの「ニューヨーク」よりも一番だった。そうこうしているうちに、その井口さんが昨年日本バーテンダー協会の総合優勝者になり、今年はプエルトリコの世界大会に出るということになった。彼の「ニューヨーク」をもってすれば、「イイ … [続きを読む] |
「倉廩(そうりん)実ちて 則(すなわ)ち礼節を知り、衣食足りて則ち 栄辱(えいじょく)を知る」『管仲』 この言葉を簡単に「衣食足りて礼節を知る」と教わったものだから、私たちはもっと簡単にして、衣食足りて「から」礼節を知ろう、と貧乏だった若い頃はやみくもに「衣食」を求めて、「礼節」などは後回しにして「突っ走って」いた、気がする。今になって振り返ってみれば、確かに余裕も何もない頃は、それが「あたり前」と思っていたけれども、もっと考えてみれば、「量」と「質」を比較するように、もともと比較できないものを無理に「比較」して「あとさき」にしていたよう … [続きを読む] |
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