書き込み数は19件です。 | [ 1 2 ] | ◀▶ |
書評『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 村上春樹著、文春文庫 高校時代のボランティア仲間はその名字からシロ(女子)、クロ(女子)、アオ(男子)、アカ(男子)と、呼ばれ、 主人公、多崎つくるだけが色が持たなかった。 このことは、多崎に「自分には個性がない」と思わせる要因となった。 この5人は固い絆で結ばれていた。 4人が地元名古屋の大学に進学したのに対し 駅の設計を強く志望するつくるだけが東京の大学に進んだ。 そんなつくるのところにある日、仲間から絶交が宣言された。 ショックから死の淵をさまよったつくるは それ以前とは、体格 … [続きを読む] |
音楽評「夜の彷徨(さまよい)」ラリー・カールトン 1970年代の初め ウエザー・リポート、リターン・トゥ・フォーエバーなど 名うてのジャズグループがロックの世界に越境してきた。 シンセサイザーを使い ドラムスは16ビート。 でも 「ジャズ喫茶でかけてもらったら お客さんの半分は帰ってしまった」 (ピーター・バラカン) ジャズ・ファンは(少なくとも日本の) 「こんなのジャズじゃない」と思い ロック・ファンにとっては難解だった。 マハビシュヌ・オーケストラを見たジェフ・ベックは 「僕ならもっとわかりやすくできる」 と 「ブロウ・バイ・ … [続きを読む] |
思想としてのロック不在の悲劇 「自由への道1~6」サルトル著、海老坂武・澤田直訳、岩波文庫 サルトルはフランスの哲学者として有名だが小説を書いていたことまではこの本を手にするまで知らなかった。登場人物はすべてファーストネーム、こなれた翻訳で読み飛ばすことができた。 第2次大戦にフランスがどのように巻き込まれていったのか知ることのできる貴重な資料。そして当時のパリの状況が現在の東京と似ていることに驚く。 第一部分別ざかり:大人になりたくない若者はこの時代のパリにもいたが、当時は思想としてのロックはまだない。反戦を主張している … [続きを読む] |
書評「自由への道3」 サルトル著 海老坂武、澤田直訳 岩波文庫 日比谷図書文化館から借り出し 著者はフランスの有名な哲学者だが これは小説。 翻訳もこなれて読みやすい。 「自由への道1」「自由への道2」では 第2次大戦直前のフランスパリの退廃した若者文化 ロックンロール誕生以前に ロックンロールしたかったが ぼちぼち若者卒業を迫られている人たちを描いたサルトルだが ここでは 第2次大戦がいよいよ始まろうとする フランスのパリや周辺都市の人々の姿が描かれている。 「1」と「2」では主役だったマチウも ここでは登場人物の一人で 小説の連続 … [続きを読む] |
書名 自由への道1・2 第1部 分別ざかり サルトル 著 海老坂武・澤田直 訳 岩波文庫 初版発行 2009年9月16日 2011年2月25日第2刷 日比谷図書文化館で借りだし * ロックンロール前夜の自由を求める30代男性。 * 1938年、第2次大戦間近のパリ。 自由に生きたいマチウは 7年来の恋人マルセルの妊娠に直面する。 結婚することはマチウにとって 「年貢の納め時」 あとは、仕事に追われる オヤジ生活しかないと思われる。 マルセルへの相談もなく 堕胎を決めてしまうマチウだが 当時のフランスで堕胎は犯罪。 闇で堕胎をしてい … [続きを読む] |
「Blow by Blow」Jeff Beck、エピック・ソニー とてもクールな演奏で 猛暑の中、愛聴している。 マハビシュヌ・オーケストラのライブをみたジェフ・ベックが 「僕ならもっと分かりやすくできる」 と言ってつくったと言われている。 当時、ジャズの世界でも シンセサイザーやファズ・ベースが取り入れられて マハビシュヌ・オーケストラ(バンド)や ウエザー・レポートなど ジャズからロックへの越境(クロスオーバー)が始まっていた。 ジェフ・ベックの言う「分かりやすく」は ジャズよりもファンキーに、ソウルフルに ということなのだろう。 スティービー・ワンダー … [続きを読む] |
『永遠の夫』ドストエフスキー 作、千種堅 訳 岩波文庫 1979年6月20日初版、'85年、11月10日第10刷 定価320円(当時消費税はなかった)、古書店で100円 訳者あとがきによれば 「永遠の夫」とは、理想の夫のことではなく こずるくたちまわる妻と愛人たち(複数形)に振り回される 万年補欠の夫のこと。 つまり、これは喜劇なのだが ドストエフスキーが書くと、 どうしても喜悲劇になってしまう。 奔放な性を謳歌した妻、ナタリーヤが亡くなったあと 万年補欠の夫トルソーツキイと ナタリーヤの元愛人、ヴェリチャーニノフが 偶然にも再開し … [続きを読む] |
『性的唯幻論序説 改訂版 「やられるセックス」はもういらない』 岸田秀著、文春文庫、2008年9月10日初版発行、743円+悪税 20代のころ、岸田秀の『ものぐさ精神分析』シリーズを むさぼるように読み漁った。 人間は、ことセックスに関しては本能が壊れていて 幻想を抱かなければ興奮できないとする 史的唯幻論は本書でも健在だが 30年のあいだにセックスをめぐる状況は大きく変わった。 アダルトビデオの登場で セックスに対する幻想(というか妄想)までもが 大きく崩れ始めたのだ。 女性の性への欲望が解放された結果、 シロート娘までもがフーゾク嬢よろしく … [続きを読む] |
『棄国子女』片岡恭子 春秋社、2013年11月20日、初版第1刷発行、1,700円+悪税 書泉グランデで購入 2013年度ライターズネットワーク大賞「マイルストーン賞」受賞 いわゆる帰国子女は、日本とは異なる、海外の生活習慣や 思考回路を身につけてしまったために、帰国後 日本のムラ社会(閉鎖的)共同体(学校、会社、地域等)で フォリナー(異邦人)扱いをされて しばしばイジメの対象となっている。 一方、この本の著者は 日本にいてフォリナーとなり 日本社会からはじき飛ばされてしまった。 「周りの顔色をうかがって、右にならへの付和雷同 他人と違うことや お上から … [続きを読む] |
『非国民(上)(下)』森巣博 冬幻舎文庫、2005年4月30日初版発行、各648円+悪税(2冊350円) 伊勢佐木町商店街の古書店 シャブ中毒の元ヤクザ、スワード、 ギャンブル中毒の元エリートサラリーマン、鯨(家主) シンナー中毒の元暴走族、亮太とバイク(♀) が 今日を耐え、 明日の快方をめざす厚生施設「ハーフウェイ・ハウス・希望」。 (そして彼らを研究対象としている関西弁の留学生、メグ。) その運転資金が尽きかけたとき 資金調達の方法として行われたのが カシノ(いわゆるカジノは正しくはカシノらしいが、 ここでは半合法のギャンブルハウス、桜田門直営 … [続きを読む] |
[ 1 2 ] | ◀▶ |