コミュニケーションが成り立たたず、
頭を打ちつけるなどの自傷を絶えずしているような子どもに、
私達は、何から教えたらいいのか。
「 HACプログラム 」 とか
http://homepage2.nifty.com/hac2001/
RDI プログラムのレベル1課題
のようなところから始めるしかない。
『 RDI 「 対人関係発達指導法 」 』
http://www.creates-k.co.jp/books/55_1.htm
から転載する。
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【アイザック:3歳】
アイザックとの暮らしには、一連の独特の難しさがあった。
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頭を壁に打ちつけることを除けば、アイザックはおとなしい子ども
で、好きなようにさせておけばとくに不満もなさそうに見えた。しか
し、何かを教えたり、一緒に遊んだりしようとすると、アイザックは
まったく受け付けなかった。「いないいない、ばあ」のような0歳児
向けの単純なゲームですら、応じようとしなかった。3歳になってい
たのに、まだ一度も追いかけっこをしたことがなかった。アイザック
は、1歳年上の兄であるジョンも含めて、ほかの子どもをすべて無視
していた。おもちゃでどのように遊ぶか教えようとするたびに、アイ
ザックは自分の木馬に戻って、木馬を揺らしはじめるのだった。
当時、アイザックが喜んでやった活動は二つしかなく、その二つ
のことなら何時間もやり続けるのだった。それは、バネのついた木
馬に乗って死にもの狂いで木馬をゆさぶることと、
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また、とくに理由も見当たらないと思えるときに、
自分の頭を打ちつけることがよくあった。
【アイザック:6歳】
「ビル・デイングのサッカーゲームをしようよ」。これもアイザッ
クの好きなゲームだ。スーザンは、先に戦艦ゲームをしますよ、と
言う。その声の調子と表情で、アイザックは、スーザンが指導者役
をしっかり担っていて、冗談を言っているのではないことを理解す
る。「じゃ、そのあとにビル・デイングのサッカー?」「う-ん、い
いえ。そのあとは四日並べで、お母さんが勝つわよ」。スーザンは、
真剣そうなふりをしたふざけた声音を使う。
「ぼくが勝つもん!」
アイザックは断固として答えるが、顔にはほほえみを浮かべてい
る。二人はまた笑い声をあげ、アイザックは「そのあとビル・デイ
ング?」と尋ねる。「わかったわ」。スーザンは不本意ながらもいう
ことを聞く、というふりをする。だが本当のところスーザンは、ア
イザックが母親と一緒に楽しむことを大切にするようになり、母親
の願いに柔軟に対応する能力をもちはじめたことを、心から喜んで
いるのだ。
【3歳~6歳の間に何をしたか】
私は、この3年間にスーザンとダリルとアイザックがたどっ
てきた困難な道のりをふり返る。頭を打ちつけるのをやめさせるた
めに、両親は何度もアイザックをきつく抱きしめた。ビーズクッシ
ョン(大きなお手玉型のクッション)の後ろにスーザンが隠れ、ア
イザックに探させたことは何百回もあった。たとえアイザックが激
しく泣き出してもスーザンは姿を見せてはいけなかった。自ら働き
かけて母親を「視覚的に参照」しなければならない、ということを
アイザックに学ばせるために。また、一緒に倒れたりジャンプした
りといった実に単純な動作を、何か月にもわたって繰り返し練習し
た。この3年間、私たちがずっと試みてきたのは、「誰かと一緒に何
かに関心をもつこと」(共同注意)によって、わくわくする気持ちを
ほかの人と共有する楽しさを、アイザックに気づかせることだった。
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