ストレスの健康への影響、今回は皮膚科の病気についてまとめました。
「ストレスがある」と自覚できている場合はいいのですが、無自覚に心理的な負担の多い生活をしているうちに症状が出たり、悪化させることがあります。症状はストレスケアのサイン。健康を損なわないうちに、早めのストレスケアを。
ストレスが原因かもしれない病気
帯状疱疹・多汗症・湿疹・じんましん・アトピー・アレルギー性疾患
ストレスがどうして?
ストレスによる緊張やイライラは「かゆみが発生した」という信号になる化学伝達物質を作ります。脳に伝わって「皮膚をかけ!」という司令が実行されると、皮膚のかゆみの受容体がさらに刺激され、かく→炎症というスパイラルが起こるので、湿疹や皮膚炎を悪化させます。
ストレス時の免疫力低下で、ふだんは身体に潜伏するウイルスが抑制できず、発症するのが帯状疱疹。アレルギーの場合は、症状を発生させずにすむ「アレルゲン耐性」をストレスが下げてしまうこともわかってきました。そのため、緊張や不安があると花粉症やアトピーなどの症状が悪化するのです。
じんましんには、ストレスや精神疾患が原因で発症する「心因性じんましん」があります。ストレスを感じるたびにじんましんが発症する人は、抗ヒスタミン剤による治療より、心の負担を軽くすること、ストレスを受ける生活や環境を見直すことが効果的です。
ピックアップ疾患:多汗症
暑いわけでも、運動をしたわけでもないのに、大量の汗をかく病気です。汗をかく場所は、全身に発汗する場合と部位が限定される場合があります。全身の場合は、さまざまな病気由来で起こる続発性多汗症が多く、手のひら、足の裏、脇の下、顔、頭皮など局所性多汗症(原発性多汗症)は原因となる病気がなく、ストレスに起因するとされています。
罹りやすい人
日本人の7人に1人が症状を自覚するくらい身近な病気です。そのわりに、単なる「汗っかき」と思われ、認知度は極めて低いようです。
遺伝的に「汗をかきやすい人」はいますが、それが体質か性格かで異なります。緊張のしやすさなど、遺伝的な性格をもつ場合、多汗症になりやすいでしょう。発症は思春期からですが、幼児のころから自覚する場合もあります。
また、ストレス以外に、交感神経を過敏にする肥満、食生活の乱れ、喫煙も原因になります。
症状
不安や緊張での冷や汗を「精神性発汗」といいます。交感神経が優位になり、汗腺を刺激して、汗が出るのです。不安や緊張が強く、精神的な負担を強いられる状況がつづくほど、交感神経の過剰な働きで大量の汗をかいてしまいます。
ひどくなると汗で「タオルやハンカチが手放せない」「靴の中が汗でビショビショになる」「握手や名刺交換ができない」「ノートや文書が破れた」「パソコンやスマフォなどが壊れた」といった生活や対人関係で支障が出る場合もあります。汗が気になって、緊張して、さらに発汗するという悪循環に陥ることもあります。重症になると、発汗が毎日、数時間から終日つづくケースも。そのため「人間関係がうまくいかない」「恥ずかしいから人前に出たくない」と、家に閉じこもるなど、対人恐怖、社会不安、うつを引き起こす原因になることもあります。
治療のタイミング
明らかな原因がなく、局所的に過剰な発汗が6か月つづいていて、次のガイドラインで2つ以上当てはまる場合、原発性多汗症の可能性があります。
・最初の症状は25歳以下
・汗は身体の左右対称にみられる
・睡眠中は止まる
・週に一度以上、症状が出る
・家族に同じ経験をもつ人がいる
・日常生活に支障をきたす
皮膚科の受診で症状が軽減され、生活面に支障がでなくなりますし、汗そのものがストレスにならなくなります。また、最近では多汗症外来もあります。
また、皮膚科での治療と併せて、心理療法(認知行動療法、自律訓練法、催眠療法)も有用です。日常生活に支障をきたしている場合、ストレスケアで症状が改善できる可能性は高いです。
重症の多汗症、80万人 有病率、米国の2倍
厚労省研究班が初調査(共同通信2010/05/11)
http://www.47news.jp/feature/medical/2010/05/post-322.html