1950年代、サンフランシスコのとあるクリニックでのお話。
「先生、ここのソファは新品同様なのに、
なんで足もとの前張りだけスリ切れちまってるんです?」
家具職人の不可解な言葉で、心臓内科医のフリードマンは、心臓疾患の患者さん特有の行動パターンに気づきます。観察してみると、彼らの多くは待ち時間をイライラして過ごし、呼ばれたらすぐ立ち上がれるよう、浅く腰掛け、脚をゆすっていました。これでは、前張りもこすれるわけです。
同じ医師ローゼンマンと研究し、1959年に心臓疾患の患者さんの行動パターンについて発表されます。aggressive([否定]攻撃的/[肯定]積極的)の頭文字をとって「タイプA」と命名されました。
タイプAの特徴
タイプAの狭心症と心筋梗塞の発症率はそれ以外の人と比べて2倍になり、虚血性心疾患の患者さんの77%はタイプAという調査結果もあります。心臓疾患の発症リスクとともに、重症度も高い、日常のストレスケアが不可欠な人といえます。
タイプAの性格や考え方、行動には次のような特徴があります。
①目標達成へと導くバイタリティと行動力
②強いライバル意識とリベンジ精神
③周囲からの高い評価や昇進を望む野心
④限られた時間に多くの仕事を同時に抱え込む
⑤機敏でせっかち、歩くのも食べるのもしゃべるのも早い
⑥不可能を可能にすることが好き
ただ、アメリカと日本では文化が異なり、日本人の場合、闘争心や敵意を抑圧して(これも危険)内に秘めたり、仕事への熱意として表現されることが多いようです。
日々の生活習慣では、喫煙率が高く、飲酒量が多い(海外の調査)、日常的にストレスを感じている割合が高くなっています。
あなたはタイプA?
タイプAの人が心臓疾患のリスクを回避するためのステップ1は「タイプAだと気づくこと」です。ということで、さっそくチェックしてみましょう。
タイプAチェックリスト
「YES」か「NO」でお答えください
01. 毎日忙しい生活である
02. 時間に追われている
03. 何ごとにも競争してしまう
04. ちょっとしたことでも怒りやすい
05. 仕事や行動に自信がある
06. 何ごとにも熱中しやすい
07. 何ごとでもきちんと片付けないと気がすまない
08. 緊張したりイライラしやすい
09. 早口でしゃべる
10. 並んで順番を待つことがイヤである
野村忍(早稲田大学教授)『情報化社会のストレスマネジメント』(日本評論社/2006年)より
「YES」が6つ以上の人は、タイプAの傾向が強いので要注意です。
タイプAのリスクを回避するステップ
step①
タイプAだと気づくこと
・日常の自分を振り返ってタイプAの行動パターンを
いつ、どこで、どのくらい、どんなふうにやっているか
・家族や同僚に、自分のタイプA的な部分を教えてもらう
・家族や同僚があなたの行動パターンについて
どんなふうに感じ、考えているか聞いてみる
step②
タイプAの行動パターンを変える練習
・よく笑う
・ゆっくり話す、食べる
・時計を使わない(スマフォがあるけど)
・パートナー・家族への愛情表現
・追い越し車線に入らない など
step③
仕事の負荷を減らす
・仕事量の調整
「俺がやったほうが早い(うまい)」のはみんなわかってます
・労働時間の調整
1日の労働時間が11時間を超えると、
1日7~8時間労働の人と比べて、
心筋梗塞を起こすリスクは2.4倍に上昇します
・仕事以外のコミュニケーション・趣味の充実
・おしどり夫婦は血圧が低く、不仲の夫婦は血圧が高い
・一人暮らしで近所づきあいがある人とない人では、
ご近所と親しい人のほうが血圧は低い傾向
・ペットを飼っている人と飼っていない人では、
飼い主(下僕かも)のほうが血圧は低い傾向
・日常で「快適さ」「幸せ」を感じている人は血圧が低く、
「欲求不満」の強い人は血圧が高い傾向
step④
健康的なリラクゼーション法の習慣化
・ストレッチやヨガ、入浴
・もちろんスポーツもOK!
・写経や陶芸などの趣味
・ストレス・コーピング(認知行動療法)
・自律訓練法
・暴飲暴食などの不健康な解消法はダメ!
参考
調査研究報告書No.117 職業と心臓病
日本労働研究機構/1998年11月
http://db.jil.go.jp/db/seika/zenbun/E1999010013_ZEN.htm