目の酷使や緊張が重なると、筋肉が収縮してできたコリが血管を圧迫するため、血流が悪くなります。ストレスを受けた目は血行が悪くなり、疲れ目になる、さらに疲れ目の状態が続くと肩こりや頭痛、吐き気、倦怠感など目以外の場所にも症状が現れる眼精疲労になります。疲れ目は、目を休ませることで回復しますが、眼精疲労を回復させるには、ストレスをためない生活習慣や生活環境の改善が必要です。さらに、目には「ストレスが原因」と言われる病気があります。しかも、見えにくい状態がさらにストレスになるという悪循環を生み出します。
症状はストレスのサイン。健康と視力を失わないうちに、早めの受診を。
ストレスが原因かもしれない病気
眼精疲労・ドライアイ・飛蚊症・中心性網膜症
ストレスがどうして?
過労や人間関係のトラブルで神経をすり減らす生活をしていると、自律神経のバランスが乱れることは、このシリーズで何度かふれてきました。涙の分泌をはじめとする、目のバリア機能もこの自律神経の働きによるものです。
眼球には、お肌と同じように、外からの刺激や異物、感染から目を守るバリア機能があります。その最前線が涙。蒸発を防ぐ油層、酸素や栄養を含んだ涙で目をうるおす涙液層、涙を定着させるムチン層の3層構造になっています。
涙がうるおしている角膜は、コラーゲン繊維ががっちりスクラムを組んで眼球を守ります。その内側の脈絡膜には毛細血管がたくさんめぐり、眼球の新陳代謝を行っています。脈絡膜からの栄養や酸素を受け取って、老廃物を渡す網膜は、眼球の形状を維持する透明なゼリー状の硝子体を包んでいます。その網膜には、異物や不要な物質の侵入を防ぐ、関所のような役割があります。
ストレスは、こうした目のバリア機能にダメージを与えます。たとえば、
・交感神経優勢に傾け、涙の分泌量が減る
・網膜の関所の機能を弱くする
・還元力が弱まり、活性酸素が増える
そのため痛みや不快感、見え方のトラブルが起こります。
涙が十分に分泌されずに乾く、あるいは、不足分を補うために涙が止まらなくなるドライアイ。黒や白の糸くずが飛んでいるように見える飛蚊症は、ゼリー状の硝子体がところどころ液化して、しみ出した水の影が網膜に映りこんでしまうもの。飛蚊症は、加齢が原因と言われましたが、若い人も子どもにもみられます。これは、ストレスによって増えた活性酸素が硝子体で悪さをしたことが原因と考えられます。
なかでも、ストレスがいちばんの原因と考えられる目の病気が、中心性網膜症です。
ピックアップ疾患:中心性網膜症
正式名称は、中心性漿液性脈絡網膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいもうみゃくらくまくしょう)といいます。
片方の目が物がゆがんで見える、視野の中心が暗いなど、視力が低下したり、見えづらくなる病気です。時期をずらして、もう片方の目に同様の症状が現れることもあります。
目のバリア機能である、網膜の関所が破られて、栄養や酸素以外の不要な水分(漿液)が流れ込み、網膜内にできた水ぶくれで網膜剥離ができて起こります。見えにくくなるのはこのためです。通常は、自然に水ぶくれがひいて、数か月で治るのですが、症状が長引く、両目に起こる、再発をくり返すと、視細胞の機能低下が起こり、視力が戻らなくなるケースもあります。
罹りやすい人
30・40代をピークに20~50歳の働き盛りの男性に多い病気です。発症確率は、男性は女性の6倍です。女性は妊娠中にかかることがあります。発症した人のほとんどが、過労や睡眠不足が重なっているとか、ストレスが溜まっているときに発症しています。目のストレスといえば「光」は切っても切り離せません。ストレスの自覚がなくても、長時間のパソコンの作業、強い光を見すぎる生活など、網膜の許容量を超える光を浴びている場合、発症の原因になります。
20歳前、50歳以降の人は、ほとんど中心性網膜症の症例がありません。50歳以降の人で、似たような症状が現れる場合は、加齢黄斑変性の疑いがあります。この病気も原因はまだ特定されておらず、加齢だけでなくストレスが原因になることが疑われています。
症状
網膜剥離の状況や位置によって、見えづらさに差があります。
・目が弱くなった
・周辺に比べて、視野の中心が暗くなる、欠けて見える、ピンボケする
・物が歪んで見える
・物が小さく見える
・実際の色と違って見える
・近くの物に焦点を合わせにくい
治療のタイミング
片目に起こるので発症に気づきにくく、そのうち治っていることも少なくありません。もし、症状に気づいたなら、眼科での受診・検査をおすすめします。目の疲れを感じたら、片目の見え方がおかしくないかチェックして、見え方の異常を早く発見できる習慣も大切です。
早期回復と予防のためは、ストレスを軽減する生活を送ることです。
①たっぷりの睡眠
徹夜明けや睡眠不足のときの発症が多いのです。
目のバリア機能を復活させるには休ませることがいちばん。
ちなみに、日本人男性の死亡率を最も下げる
質・量ともに最適な睡眠時間は7時間といわれています。
②規則正しい生活
ストレスにつながり、新陳代謝を下げる暴飲暴食は絶対ダメ。
喫煙(血流悪化→網膜の新陳代謝を低下)、
飲酒(眼圧上昇)も回復までは控えめに。
③パソコン・スマフォ使用時の保護メガネの使用
④緑黄色野菜でルテインを摂取する
ルテインは強い抗酸化作用を持つ天然色素。
網膜の黄斑部や水晶体に存在し、ブルーライトの刺激で発生する
活性酸素を還元して眼球を守る、いわば天然のサングラスです。
1日6mg、眼病予防・改善には20mgの摂取が推奨されています。
多く含まれるのは、ケール・大麦若葉・ホウレンソウ・パセリなど。
ホウレンソウなら5株(200g)で約20mg摂取できます。
含有量は少なくなりますが、ブロッコリー、ニンジン、カボチャなど
緑黄色野菜に含まれています。
・毎食、少しずつでも緑黄色野菜のおかず食べる
・パセポン(ドライパセリ)をかける
・青汁(ケールや大麦若葉が多く含まれるもの)を飲む
など、意識的な摂取を心がけましょう。
今流行りのパクチーにも含まれていますので、お好きな方はぜひ。
上記のほか、眼精疲労は軽度のうちにヘッドマッサージでケアする、一人で手放し切れないストレスを抱えたときは心理カウンセリングを利用することで、身体の不調とストレスはこまめにケアしていきましょう。