日本で仕事を苦にして自殺するケースの原因は「過労」が多いのですが、 20か月間に24人の自殺者が出ているフランステレコムの場合、 原因はパワハラ(パワーハラスメント)。 それもリストラ目的のシステマチックなものでした。 *ちなみに「パワハラ」は和製英語で、海外では "moral harassment(モラル・ハラスメント)"や"Mobbing(モビング)"が一般的。 ――それは2006年、管理職向けのセミナーだった。「会社側は いかにして我々の協力者を圧力下に置くかを説明しようとして いた。50歳付近が膨れ上がった、従業員の年齢によるピラミッ ドを、我々の眼下に置くことから始めた」と、彼は回想する。 「司会者は言った。『問題がどこにあるかわかりますか?問題、 それは諸君です』と」 (..)熱心な人々は恐らく何とかしようとするだろう。次の方 法に従うという条件で。「諸君は、自分のチームに、できるだ け早く出て行かせるように働きかけるべきだ。彼らに転職を勧 めてください。(..)彼らを追い詰めるか、彼らの悪事の現場 を押さえるためにメールと通話を監視することをためらわない でください。」 セバスチアンは思い出す、「我々は余りにも気分が悪くて、互 いに顔を見ようともしないほどだった。」 ―― ▽フランステレコムにおける自殺の波(『Le Nouvel Observateur』9/17) http://ameblo.jp/cm23671881/entry-10358876427.html パワハラは、 ・組織の中の権力関係において ・組織本来の業務(指導・育成・命令)を超えた権力行使が行われ ・それが日常化するうち、人間としての尊厳や人格を侵害され ・その結果、不安な心理状態、心身の消耗、職場環境の悪化が起こります。 具体的には、 ・部下の自己表現を妨害する ・部下を孤立させる ・同僚の前で部下をこきおろす ・仕事で部下の信用を傷つける ・部下の健康を危険にさらす (「職場で受けるいじめの5段階」理論/ハインツ・レイマン博士/心理学者・産業医) たとえば、アタマをガツンとひっぱたくようなダメ出しをしたあと、 キツい仕事を「やります」と言わせ、「できません」と言わせません。 こうして相手が服従するしかない状況をつくりだします。 このとき、言われた被害者の部下のことを 「できません」って言えばいいじゃん と、周囲の人は思うかもしれません。 実は「できません」と言うことそれ自体、非常にストレスが高い行動です。 責任上、物理的に「できない」場合であっても、 自分の能力のなさへの恥の感情、あるいは自己批判が伴います。 ことに日本人の場合、そんな心理が強く働くようです。 しかも、今、目の前にいる相手の前、つまり人前で言わされるのです。 自尊心は著しく損なわれます。 フランステレコムのような組織的で被害者が多いケースであれ、「経営の安定化を図る」という“大義”があります。 同様に、仕事や会社のためという“使命感”や 相手への励ましや思いやり(?)のためという“善意”が働いています。 さらに、加害上司は“無自覚”に行っていたり、 口の悪さや毒舌を“自分の個性”と思っていたり、 それどころか、上に立つ者の“資質”や“リーダーシップ”だと勘違いしていたり……。 パワハラにも「五分の魂」があるのです。 そのせいで、組織が黙認していることもあるし、 本人も自覚がしにくいし、 どちらに転んでも、改善には時間がかかります。 職場でのイジメが日常化する前に、 ・パワハラが起こりそうな心理状態や傾向 ・部下(あるいは上司)が自分に対してどう感じているか を把握していることが、被害を未然に防ぎます。 あなたが加害者にも被害者にもなっていないか、 今、その兆候がないか、チェックしてみませんか? パワハラ度チェック[加害者編] *当てはまるのはいくつ? ○ 部下を立たせたままでよく説教をしたことがある ○ 部下の人間性(性格など)を攻撃したことがある ○ 部下を怒る時に、周囲の状況を気にしたことはない ○ おとなしい部下には、ついつい口うるさくなる ○ 今までに部下に暴力を振るったことがある ○ 部下は自分の顔色を見て、行動しているような気がする ○ 突然の休暇をちょくちょく取る部下がいる ○ 今までに複数の部下が辞めたことがある ○ 部下が精神的な病気になったことがある ○ 自分の意見に反論をする部下はいない ○ 自分に反抗的な部下がいる、または嫌いな部下がいる ○ 部下に意見を述べられるとむかつく ○ 若手社員は、生意気だと思う ○ 他のセクションの部下は出来が良い。出来の悪い部下ばかり、押し付けられている気がする ○ 部下の顔、行動を見るにつれイライラしてくる パワハラ度チェック[被害者編] *当てはまるのはいくつ? ○「役立たず、お前なんかいてもいなくても同じだ」などと、無能扱いされた ○ ちょっとした仕事のミスをとらえられ、「クビだ、明日から来なくていい」といわれた ○ 仕事を与えられず、継続的に無視された ○ 自分だけ過重なノルマを与えられた ○ 時間外の飲み会や趣味を強要された ○ 仕事が終わって帰ろうとすると「俺が残っているのに先に帰るのか」と繰り返しいわれた ○「理由なく、俺のいうとおりにしろ」などと強制された ○「お前はノロマ」だと他人の前でののしられた ○「お前のせいで業績が伸びない」などと他社員の前でいわれた ○ 飲み会で「酒も飲めないのか、歌もうたえないのか」といわれた ○「親の顔が見てみたい」などと、仕事に関係のない家族のことまでいわれた ○ 上司から暴力を振るわれた ○ 出身校など、学歴をバカにされた ○ 席が近くても、仕事のことは全てメールで、一切話しをしてくれない ○ あいさつをしても無視される (東京人権啓発企業連絡会 http://www.jinken-net.com/ より) もしも、仮に、あなたがパワハラを受けているとしたら…… 特定の人との間に苦痛を伴うコミュニケーションは、 パワハラの常用テクニックであることを忘れないでください。 そうと知っていれば、受け身はできます。 あなたが強くなる必要なんてまったくありません。 絶対に「わたしが弱いからいけないんだ」などと自分を責めてはいけません。 一日も早く、誰かに相談してください。 そして、安全なところに逃げてください。 |