10年以上前の TV CM に、 「くさめ、くさめ…」 と能 の衣装をまとった人が、二人で 繰り返す ものがあった。
「くさめ」 とは、昔の日本語で、 今の日本語なら、「くしゃみ」 である。
高校生の古典で習った 『徒然草』 に、「くさめ」 の出てくる有名なくだりがある。
第四十七段 > 或人、清水へ参りけるに、老いたる尼の行き連れたりけるが、 > 道すがら、「くさめくさめ」と言ひもて行きければ > (ある人が清水寺に、お詣りに出かけた。一緒についてきた年寄りの尼さんが > 道すがら、「くさめ、くさめ」と言い続けてやめない。)
> 鼻ひたる時、かくまじなはねば死ぬるなりと申せば、 > (くしゃみをしたときに、このまじないをしなければ、死んでしまうと言うではないか。)
> くさめ > くしゃみをしたときに唱える、まじないの呪文。 > 「休息命 ( くそみょう ) 」 を早口で言った言葉。 http://www.tsurezuregusa.com/index.php?title=%E5%BE…3%E6%AE%B5
ちなみに、英語圏でも、同じような習慣があり、 今でも、この習慣は続いている。
先日見た、TVドラマ 「MI-5」 で ベネズエラ大統領の暗殺を CIAに頼まれた狙撃手が、くしゃみをした時に、 元ジャーナリストの MI-5見習いくんが、 「Bless you!」 (あなたに、神のご加護があらんことを!) と 間髪を入れずに言っていましたから。
昔の日本や英国の人々は、くしゃみと一緒に、体の中から霊魂が飛び出してしまい、 入れ替わりに、邪鬼 (悪霊) が体に入ってきて、 それで、死んでしまう。 と考えていたようです。
「風邪は万病の元」 といいますし、 医療が国の隅々まで行き渡っていなかった時代ですから、 「くしゃみ」 から死んでしまうことは、本当によくあったのだと思います。
だから、誰かが、くしゃみをしたら、 「くさめ」 と、おまじないのことばを唱えたり、 「(God) Bless you!」 (あなたに神のご加護があらんことを!) と神に祈ったのです。
上で、 「くさめ」 は、 「休息命 ( くそみょう ) 」 の変化したものという説を 紹介しましたが、
わたしは、邪鬼に向かって、 「糞食め ( くそはめ ) 」 と言ったことばが、 「くそはめ」 → 「くさめ」 になったという説を支持します。
なぜなら、現代でも、「そんなの 糞食らえ」 というような言い方が残っているように、 邪鬼などの相手に向かって、 「糞食らえ」 という風習があったと考えるほうが 自然だからです。
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