精神障害の労災に新基準…うつ病など審査簡略化
(読売新聞3/22)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=56320

2010年度にうつなど精神障害によって労災認定された件数は
308件(審査請求は1181件)です。
じつは「過労死」など脳・心臓疾患(802件)を上回り、
2年連続で1000件を超えています。

これまでの旧認定基準では6～8か月かかっています。
新基準の導入の目的は認定審査の迅速化ですから、
1年間の認定件数はさらに増えることが予想されます。

旧基準では
・「どんな出来事」があり
・「その結果どうなったか」で評価されました。
新認定基準では、
・「強い心的負担となる出来事があったかなかったか」
での評価になります。
さらに、労働時間や具体的な例が記載され、
複数の原因がある場合は評価の合算になります。
（旧基準では評価方法が定められていない）
また、もともとうつ病で治療中だった人が悪化したケースは
旧基準では対象にされませんでしたが、
新基準では対象になります。

では、どんな出来事が心的負担となったのでしょう？

労災認定された精神障害の発症原因の上位10位をまとめると
以下のようになります。

 1位: 仕事内容・仕事量の大きな変化………41件(12件)
 2位: パワーハラスメント…………………………39件(5件)
 3位: 悲惨な事故や災害の体験（目撃）……32件(0件)
 4位: 勤務・拘束時間の長時間化…………… 25件(6件)
 5位: 上司とのトラブル……………………………17件(2件)
 6位: 重度の病気やケガ…………………………16件(2件)
 7位: 顧客や取引先からのクレーム………… 10件(6件)
     : 退職強要………………………………………10件(2件)
 9位: 担当業務が複数人から一人に………… 9件(2件)
10位: セクシュアルハラスメント………………… 8件(0件)

※2010年度精神障害などの労災保障状況より
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001f1k7-a…01f1o2.pdf

※カッコ内は件数のうちの自殺の件数

これらの原因から見えてくるのは
心的負担を負った人の孤立化です。
・キャパシティー・オーバー(1・4・9位)
・破綻した対人関係(2・5・7・10位)
・トラウマ体験(3・6・7・10位)
など
本人が深く悩み、苦しんでいることに
誰も気づかず、いたわる人もなく
シェアできる相手もいない職場環境が
その背後には見えてきます。

個人が自分の状態を把握する
「セルフケア」だけでは限界があります。
管理職が組織のメンタルヘルスの状態を把握する
「ラインケア」がさらに重要になってくるでしょう。

たとえば、
「仕事内容・仕事量の大きな変化」や
「顧客や取引先からのクレーム」も
部下に仕事を丸投げしてフォローがない、
あるいは、サービス残業やトラブルの握りつぶしなどで
その事実を“なかったことにする”隠ぺい行為が
心的な負担を重くしていきます。
何しろ「言えない」のですから。

逆に、職場の空気が
・誰かに声をかけてもらえる
・いっしょに考えてもらえる
・だからSOSが出せる、それもできるだけ早く
であったなら、

労災認定を受けるほどの
重い精神障害を負うリスクは低くなります。
組織のメンタルヘルスのコンディションを維持できて
個人はもちろん、組織としてのパフォーマンスが向上

することはまちがいありません。


（つづく）


［参考］
●精神障害の労災認定基準
心理的負荷による精神障害の労災認定基準を策定
(厚労省2011/12/26)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html
→精神障害の労災認定(PDF)
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyouse…325-15.pdf
→精神障害等の労災補償について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken…90316.html