職場のメンタルヘルス不調を防ぐために(2)~ワタミのケース:聞こえないSOS
2012年03月31日(土)
前回(http://sns.hamatch.jp/blog/blog.php?key=41546)のつづきです。 今年2月、神奈川労働者災害補償保険審査官(神奈川労働局)が 08年6月に自殺したワタミの元女性社員について労災認定した ニュースは記憶に新しいと思います。
ワタミ社員の過労自殺を認定 入社2カ月の26歳女性(共同通信2/21) http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012022101001979.html →女性が心を吐露した手帳の写真があります。 「過労自殺」入社2カ月ワタミ新入社員、労災審査官認定/神奈川(神奈川新聞2/21) http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1202210028/
当時26歳だった彼女は、入社わずか2か月で 不慣れな調理業務で時間外労働が月100時間超、 休日課せられたAM7時からの研修会やボランティア活動、 リポート執筆など「過酷な労働条件」による 「業務による強い心理的負担が原因で精神障害」 と認定されました。
体が痛いです。 体が辛いです。 気持ちが沈みます。 早く動けません。 どうか助けて下さい。 誰か助けて下さい。
これは共同通信の記事に掲載されている 手帳に綴られた彼女の言葉です。 入社2か月、職場での人間関係を築けずに 苦悩していた様子が伝わってきます。
自殺のあとも、
08年8月に遺族は横須賀労働基準監督署に労災を申請しますが、
横須賀労基署は、自殺の原因は「業務外」として申請を認めず 09年7月に「不支給」と決定しています。→申請から11か月
10年3月の時点で、遺族は再度、神奈川労働局に審査を請求。 http://www.kanagawa-rouren.jp/archives/151 今回12年2月、横須賀労基署の処分を取り消しての労災認定となりました。→請求から1年11か月
4年間、彼女のSOSは届きませんでした。
前回書いた、 ・誰かに声をかけてもらえる ・いっしょに考えてもらえる ・だからSOSが出せる、それもできるだけ早く という職場の空気に彼女が包まれることもなかったでしょう。
ところが、2月の労災認定のあと、ワタミ・渡邉美樹会長は ツイッターで下記のようにコメントしています。
労災認定の件、大変残念です。四年前のこと 昨日のことのように覚えています。 彼女の精神的、肉体的負担を仲間皆で減らそうとしていました。労務管理できて いなかったとの認識は、ありません。ただ、彼女の死に対しては、限りなく残念に 思っています。会社の存在目的の第一は、社員の幸せだからです 2012.02.21 20:55 https://twitter.com/#!/watanabe_miki/status/1719260…0666309632
これに対するバッシングで炎上したことは周知のとおり。
企業の目的は「利潤の追求」です。 そうして、利潤を出すことで、 雇用者や雇用者の家族を守っています。
「会社の存在目的の第一は、社員の幸せ」という 渡邉会長の言葉にも嘘ではないと思います。
しかし、もし企業が高い利潤を追求するとき、 それに着いて回るリスクをどれだけ許容できるでしょうか?
今、わたしたちは、 ・同じリスクが存在する、どこにでも ・リスクに対して非常に無力 再認識するとき、だと思うのです。
これは、耐性や抵抗力をあげるのではなく、 回避しなくてはならないタイプのリスクです。
渡邉会長は優れた経営者で、成功者です。 ですが、こんなにもこのリスクの前に無力でした。 たしかに、ワタミや渡邉会長個人を非難することは いくらでもできるでしょう。 しかし、非難してもわたしたちの問題は解決しませんし、 ましてや、対岸の火事としている余裕もありません。
このリスクはワタミだけのものではありません。 前回、書いたとおり、精神障害による労災の審査請求は 年間1000件を上回っています。
新年度、今年もフレッシュマンが社会にデビューします。 まじめに真剣に、このリスクを回避する方法を わたしたち一人一人が考えるときではないでしょうか。
(つづく)
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カテゴリニュース
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投稿日時2012/03/31 17:04
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