「 自己統制 」 というのは、 「新版 S-M 社会生活能力検査 」 の以下の検査項目、
{ 1 身辺自立 (SH) 2 移動 (L) 3 作業 (O) 4 意志交換 (C) 5 集団参加 (S) 6 自己統制 (SD) }
の一つである。
10年ぐらい前に指導した自閉症児に、 指示をしたり、待たせたり、動作の修正を指示したりすると、 口を三角にして、教師の顔をひっかく生徒がいた。
「 自閉症教育の7つのキーポイント アセスメント 」 から、 この生徒が、 「 教師の顔をひっかく 」 場面を拾っていくと、次のようになる。
> ①自ら学習する態勢になる力 < 学習態勢 > 2段階 「 起立や着席を一人で行ったり,大人と一緒に歩調を合わせて 歩いたりすることができる 」 2段階 「 背後,横,正面等からのガイドを受け入れることができる 」
> ②自ら指示に応じる,指示を理解できる力 < 指示理解 > 応じることができる 」 2段階 「 今の行動を修正し, 「 ~して 」 や 「 もう一度して 」 に応じること ができる 」 3段階 「 指示に応じて ( その場で ) ,10秒以上,待つことができる 」
要するに、この生徒は、 これらの教師の指示は理解できるが、 ( やってられるかよ。 ) と 教師の顔をひっかくのである。
「 自己統制 」 の力が限りなく、弱いのである。」
加えて、 「 コミュニケーション 」 の未熟もある。
( やってられるかよ。 ) と穏やかに、相手に伝えられれば、いいのに、 「 教師の顔をひっかく 」 という間違ったコミュニケーションを 何年もの間に、学習してきてしまったわけだ。
困っているのは、 「 顔をひっかかれる教師 」 なのか? といえば、そうではない。 困っているのは、 この生徒自身である。
それなりの理解力が、あるのに、 『 自己統制 』 の力がなくて、 自分自身をコントロールできない。 コミュニケーションも未熟だから、人に伝えることもできない。
アンバランスな自分自身の能力に振り回されていて、苦しい状況にあるからだ。
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